村田京子のホームページ – 講演会「服装で読み解くフランス文学」
秋の教養講座2018
「服装で読み解くフランス文学―バルザック『ふくろう党』を例に―」
開催日: 2018年11月23日(金)15時~17時
場所 放送大学奈良学習センターZ308講義室
コーディネーター 奈良日仏協会、放送大学奈良学習センター
《案内》下記のような講演会(講演者:村田京子)を開催いたします。関心のある方は是非ご参加下さい(詳細は秋の教養講座2018チラシを参照のこと)。



19世紀フランスの作家バルザック(1799-1850) は、「近代小説の祖」と呼ばれ、彼の小説大系『人間喜劇』(約90篇)には、フランス社会のあらゆる階級・職業・年齢の2500人以上の人物が登場しています。バルザック自身、自らを「歴史の秘書」とみなしているように、彼は、登場人物の服装や住居などを現実に即して詳細に描いています。とりわけ、彼は服装を職業・生活・習慣・性格を表す記号とみなし、『人間喜劇』において「服装の記号学」を打ち立てています。

本講演では、『人間喜劇』最初の作品『ふくろう党、または1799年のブルターニュ』(1829)を取り上げ、服装が物語にどのように関わっているのかを見ていきたいと思います。さらに、この作品は、フランス革命末期にブルターニュ地方で起こった「ふくろう党」と名乗る農民たちによる反革命運動を扱った「歴史小説」です。しかも、ふくろう党を指揮する王党派貴族モントーラン侯爵(左上図:農民を指揮する王党派貴族)と、彼を誘惑してその身柄を政府に引き渡すべく、警察大臣フーシェから密命を受けた女スパイ、マリー・ド・ヴェルヌイユとの悲恋

物語でもあります。したがって、革命の歴史も絡めながら、本作品を読み解いていきたいと思います。

1.服装を通して見る男たちの戦い:共和軍司令官ユロと、共和軍を迎え撃つ農民たち、およびその指揮官モントーランの服装に焦点を当て、彼らの服装によって象徴される政治思想、さらに人物の性格を探っていきます。

2.服装を通して見る総裁政府時代の人物:フーシェの手下コランタンの服装(総裁政府時代に流行した「アンクォヤブル」の奇抜な衣装(右上図:アンクォヤブルとメルヴェイユーズ)に注目した後、同じく当時流行の「メルヴェイユーズ」の衣装を纏ったマリーと、マリー・アントワネットの時代の宮廷衣装(左図)を纏った貴族の女性たちを対比させ、絶対王政から共和政への時代の変遷を、モードを通して検証していきます。

このように、本講演では、様々なモード図版や絵画などを用いながら、「視覚的に」フランス文学を読み解いていきたいと思っています。

《報告》本格的冬の到来を思わせる寒さの中、大勢の方に参加して頂きました。まず、三野放送大学奈良学習センター長兼 奈良日仏協会会長から、紹介して頂いた後、1時間30分にわたり、バルザックの『ふくろう党』についての話をしました。つい、いつもの癖で早口で話したせいか、司会の杉谷さんから後で「弾丸トーク」という感想をもらってしまいました。講演の後、会場の方々から様々な質問を受けましたが、衣装としては「アンクォヤブル」と「メルヴェイユーズ」が皆さんの印象に残ったようです。『人間喜劇』において「緑の服」を着た女性は娼婦的な女性である、とか「緑の眼」は陰険さを表す、といったことにも反応が大きく、学会等では質問されない事柄を質問されて驚くと同時に、新鮮な気持ちになりました。奈良日仏協会、放送大学の受講生の方々の他にも、府立大の卒業生や公開講座の方々も20名ほど大阪からわざわざ奈良まで来て下さり、感謝しています(参加者44名)。

懇親会は「菜園」というイタリアレストランで行われ、そこでも天理大学のオリヴィエ・ジャメ先生や、奈良先端研のフランス人研究者の方などとお話ができ(ジャメ先生とは翻訳に従事されている夏目漱石の話を、研究者の方とは目下、話題のルノー・日産のゴーン氏のことなど)、予定の時間をオーバーするほど盛り上がりました。奈良日仏協会には元NHKのアナウンサーや、仏文学部を出られた方、シャンソン歌手、フランスに住んでおられた方など、様々な職業、経歴の方がいて興味深い話を伺うことができました。協会にはシネマの会や美術鑑賞の会もあり、時間が出来たら是非参加してみたいと思います(参加者22名)。

講演会報告:Mon Nara 12月号p.1

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