村田京子のホームページ – カリファ先生と会食

simg_2776パリ第1大学教授、ドミニク・カリファ先生が来日されました。今回はそのご著書の翻訳書『犯罪・捜査・メディア 19世紀フランスの治安と文化』(法政大学出版局)が出版されたこともあり、カリファ先生の弟子であり、この本の翻訳者でもある立命館大学講師の梅澤礼さんのお誘いで、京都での食事会に参加しました(写真左)。レストランは5月にディアズ先生ご夫妻と一緒に食事をして大変好評だった烏丸御池のイタリアレストン「オルト」。カリファ先生はミシェル・ペローやアラン・コルバンの歴史研究の流れを受け、19世紀フランスの犯罪者像をロマン主義時代の文学作品(バルザックやユゴー、ウジェーヌ・シューなど)を参照しながら読み解き、実在の人物ヴィドックをモデルとしたヴォートランやジャベール、ジャン・バルジャンなど、ピトレスクな犯罪者からルイ・シュバリエが指摘する匿名の労働者階級が次第に「危険な階級」となり、さらに世紀末になるとその労働者階級からドロップアウトしたならず者集団「アパッチ」が人々の恐怖の的になる、という時代精神の推移を当時の新聞・雑誌(とりわけ大衆紙)を通して分析されています。面白いのは、新聞では「アパッチ」族の夜襲というのがしばしば語られているのに、実際はそのような事件は起こっていない、という現実との乖離で、言わば「都市伝説」のようなものが新聞によって作られていたことです。他にもご著書の中で、公権力を担う警察、司法組織についても言及されていますが、19世紀当時、警察官は民衆に嫌われ、軽蔑されていて警察は「恥ずべき職業」であったこと、そのイメージを立て直し、警察を正当化し擁護しようとする努力が警察官の回想録の中に現れている、というご指摘が大変印象に残りました。また、先生のご著書の後半は、新聞の三面記事と新聞小説の相互影響、犯罪小説の隆盛の分析に当てられています。こうした事柄に関して、立命館大学と慶応大学でのご講演(ポスター)でお話されることになっていましたが、私は残念ながら授業があって参加できませんでした。

simg_2771「オルト」では相変わらず手の込んだ素晴らしい料理が次々に出てきて、img_2772カリファ先生も感嘆されていました。夜は一つのコースしかありませんが、全部で11品もでてくる、という大饗宴!アミューズ・グールはりんごのスープ(少しわさびが入っている)、オードブルは洋梨と帆立(写真左:涼しげなガラスのお皿も美しい!)、次に出てきた「栗」(写真右)は、栗の形をした最中の皮の中に、京鴨のペーストが入っている、というもので晩秋をイメージした、美しい盛り付けになっsimg_2778ていました。simg_2780次に「秋鮭」、「菜園」はいつものように50種類近くの野菜や食べれる花が入っていました。次の「落花生、雉」(写真左下)は白トリュフが乗っています。次がさわらに柿のソース、牛肉のミソソース(写真右下)、さらにこの牛肉を使った洋simg_2783風丼が少し、デザートは日本の梨を使ったものと、酒粕のデザート(写真)で満足度120%の食事でした。ワインは発泡ワインの後、アルザスの赤ワイン、日本酒は「抱腹絶倒」という面白いネーミングの冷酒を飲みましたが、すごくフルーティーな白ワインという味わいで、カリファ先生も「本物の日本酒」(フランスには「日本酒」と称するまがいもののお酒が多いので)を飲めた、と喜んでおられました。一日中冷たい雨の降る寒い京都でしたが、心とお腹は暖かい、充実した夜となりました。

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