村田京子のホームページ – ミロ展

IMG_0001先日、東京に出た際に、東京都美術館の「ミロ展」(ポスター)に行ってきました。19世紀末にスペインのカタローニャ地方に生まれたミロの大回顧展で、カタローニャ時代の絵では、ヤシの木のある家《ヤシの木のある絵》(右図)が代表作「モンロッチで描かれた細密画的な風景画」で、幾何学的な構図でありながら、屋根の瓦が細かく描かれていて、南国のおおらかな雰囲気が感じられました(モンロッチの絵が何作もあり、彼の郷土愛が感じられました)。次の「パリ シュルレアリスムの熱狂」では、パリのシュルレアリスムの芸術家たちと交流し「夢の絵画」が多く描かれます。コラージュが用いられたのも、この時期ですが、個人的には《オランダの室内1》(左下図)に惹かれました。この絵はミロがアムステルダム国立美術館を訪れた時、17世紀のオランダ風俗画に興味を持ち、その一人のヘンドリック・ソルフの《リュートを弾く人》(隣の図)に基づいて描いたものです。ミロはソルフの絵にあるリュートだけではなく、犬、猫、テーブルや窓外のアムステルダム風景も描きながら、換骨奪胎し、犬は音楽に合わせて踊り出しているようで、静から動へと変わっている気がしました(その代わり、リュートを聞く女性の姿はない)。さらに、虫を追いかけるカエル、音楽に魅せられたコorandaryuutoウモリ、おまけに大きな泥の足跡など、夢の中に出てきそJoan_Miro_-_Escargot_femme_fleur_etoile_e3f65c65-9f37-4284-8299-366fa2a3db35うな変なものが付け加えられています。オランダ絵画がここまで変形されるのは、非常に興味深いものでした。

スペインが独裁政権となったので、ミロはパリに移住していましたが、さらに第二次世界大戦が勃発します。戦禍を逃れてヨーロッパを転々としていた1940年頃に彼が描いた<星座>シリーズ(ポスターの《カタツムリの燐光の跡に描かれた夜の人物たち》など)が有名ですが、私はその少し前(1934年)に描かれた《絵画(カタツムリ、女、花、星》(右図)が気に入りました。この頃、ミロは文字を絵のように描くようになり、それが日本の書に関心を持つきっかけとなったそうです(確かに、後年の、墨をたっぷりつけた大きな筆を思いきり走らせて描いたようなミロの絵は、創作書道のように見えました)。画面にはフランス語で「カタツムリ、女、花、星」と文字が入っています。いわば「絵画と文字の融合」が実現したわけです。ミロの絵の特徴は、単純化された幾何学的な構図と、鮮やかな色(赤、黄、青、黒、白、緑)の絶妙な組み合わせでしょう。絵画の他に彫刻や陶器も展示されていて、幅広い活動を続けた芸術家だと改めて認識しました。

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