村田京子のホームページ – オペラ『ウィンザーの陽気な女房たち』

IMG_0001先日、フェニーチェ堺(堺市民芸術文化ホール)にシェイクスピア原作、ニコライ作曲の『ウィンザーの陽気な女房たち』(ポスター)を見に行ってきました。粗筋としては、貧窮した老いぼれ貴族フォルスタッフが二人の夫人(フルート夫人とライヒ夫人)を誘惑してお金を引き出そうとするが、同じ文面のラブレターを二人に送ったため、夫人たちの怒りを買い、彼を懲らしめようとする物語です。それに加えてフルート夫人の嫉妬深い夫も懲らしめる、という妻の夫に対する復讐と、裕福なライヒ家の娘アンナを巡って三人の求婚者が登場、そのうちの一人の青年がアンナと恋仲だが貧しいために父親から結婚を反対されるものの、最後は二人が結ばれる恋愛物語も展開されます。傲慢で自惚れた男たちを女たちが巧みな策略で翻弄し、懲らしめるという痛快喜劇となっています。ただ、最後は彼らの過ちも許され、「苦しみは全部シャンパンで洗い流しましょう!」と、仲直りして終わるハッピーエンドとなっています。

一番ひどい目に合うのがフォルスタッフ(大きな洗濯籠に入れられて、川に流されびしょびしょになったり、ウィンザーの森で妖精役の農民たちから叩かれるなど)ですが、自分の欲望のままに行動し、喜怒哀楽をそのまま表に出して、食べて飲んでどんちゃん騒ぎをする彼の磊落さは、どこか憎めず、愛嬌たっぷりで、ブルジョワのフルート氏やライヒ氏よりも、人間味あふれている気がします。作曲家のオットー・ニコライは、ドイツ出身で、ワーグナーと同時代の作曲家ということですが、その名前は知りませんでした。ヴェルデイがシェイクスピアの同じ作品からオペラ『フォルスタッフ』をニコライのすぐ後に発表し、こちらの方が有名なようです。ニコライとヴェルディはライヴァル関係にあったとか。今回の演出では、時代を1945年~55年に時代設定され、それは演出家の粟國淳氏によれば、「世界中が(第二次大戦後の)新しい時代を作り上げている時代」「(イギリスの場合)貴族が変わらなければいけない時代」「一般庶民や女性を見直す時代」であったら、とのこと。それは現在にもつながる問題提起だと思いました。舞台装置も、スケルトンで家の外、部屋の中などが見えるようになっていました。セリフ、歌詞はドイツ語でしたが、字幕があったので問題なくオペラを楽しみことができました。歌手もオーケストラも演出家も日本人によるものでしたが、レベルの高いオペラでした。

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