村田京子のホームページ – 坂東玉三郎初春お年玉公演

ポスター先日、「坂東玉三郎初春お年玉公演」(ポスター)を見に行ってきました。会場は昨年、開場100周年を迎えた老舗の劇場、大阪松竹座で、氷雨の降る寒い日でしたが、玉三郎ファンの大勢の観客が舞台を見に来ていました。ブログラムはまず、「口上」ということで、コロナ禍の後、公演を再開した折にこれまでに舞台で着た衣装(背が高いのでそれまでの女形の衣装が合わず、全部新しく誂えてもらったそうで、35年前からの膨大な衣装)を展示したので、今回もお見せしようと思っていたが、残念ながらアメリカのメトロポリタン美術館に現在、出展中、とのこと。1枚の着物を京都の職人さんに頼むと、手刺繍なので2年はかかるそうです。その豪華な着物が見れず、残念でした。口上「口上」(右写真)ではさらに「女方の魅力」ということで、普通の細長い手ぬぐいを使って、いかに女らしく肩にかけるか(手ぬぐいを軽く一回転させて曲線を作る)、また扇の持ち方、回し方など滑らかな美しい曲線を作ることで、「女らしい」所作を心掛けているとのこと。現代では「男らしさ」「女らしさ」の考えが変わってきていますが、その美しい所作はマネしたいものです。

舞踊としては、京都や大阪の座敷舞として発展した上方舞で、その演奏には地唄(箏(こと)、胡弓、あるいは三絃のシンプルな編成)が使われます。まず『黒髪』は、源頼朝との恋を諦め、北条時子に妻の座を譲った辰姫が髪を梳きながら、諦めきれぬ恋心と嫉妬心に苛まれる様子が舞に託して演じられました。また、「由縁(ゆかり)の月」は、京都の島原から大阪新町に移った遊女の夕霧(27歳でこの世を去る)にちなんだ話です。思いもよらぬ男に身受けされた遊女が、それまで苦界と思っていた廓を去ることで、愛しい恋人に会うことができなくなってしまうという悲しさを、水に映る月影に寄せる、というもの。ポスターにあるような華やかな衣装を着た玉三郎は、艶やかな女の色気と悲しみを湛えていました。また、泉鏡花の『天守物語より』では、映像技術を駆使し、玉三郎演じる富姫(映像)と亀姫が共演する、趣向を凝らした演出で、その中で亀姫の玉三郎は箏を弾き、唄も披露しました。今回は、「お年玉公演」ということで、C席は1500円と安く、学生など若い人たちにも気軽にも来てもらうよう工夫したとのこと。お正月早々、能登大地震や飛行機の事故などがあって、なかなか明るい気持ちにはなれませんが、それでも玉三郎の公演は生きていく励みになったと思います。

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