村田京子のホームページ – 映画「テノール」

IMG_0001先日、フランス映画「テノール」を見てきました(ポスター)。パリ郊外に住むラップ・ミュージシャンで寿司の出前アルバイトをしている青年アントワーヌが主人公で、オペラ・ガルニエに寿司を配達に行き、そこで偶然耳にしたオペラレッスンの歌声に魅せられ、からかわれた彼がオペラの歌真似をすることで、彼の運命が変わることになります。その素晴らしい歌声に魅せられたオペラ教師マリーが彼にレッスンを施し、彼はオペラ歌手への道を進むようになる、という話です。オペラという「高尚な」音楽と、郊外の移民地区に住む貧しい若者という異質な取り合わせが映画のテーマで、その結末がたやすく予測できるものの、なかなか感動的なストーリーとなっていました。この映画の特徴は、彼を阻む悪意のある敵役がいなくて、違法な決闘による掛け金でアントワーヌたち兄弟を体を張って養っている兄のディディエも、アントワーヌが経理士になることを願っているものの、最後は弟の夢を理解し応援するようになります。オペラレッスンに通う金持ちのブルジョワ階級の生徒たち(特にマキシム)もアントワーヌに最初は反感を抱きながらも、最後は彼の才能を認めてコンクールで正々堂々と戦えるよう尽力するなど、すべての人物が人間味溢れる姿で登場しています。特に、音楽教師のマリーが、アントワーヌが彼女に渡したラップのCDをかけてノリノリで踊り出し、庶民の音楽であるラップに全く偏見を持っていないことが印象的でした。彼女は癌で余命わずかですが、最後の時間を自分の好きなように生きることに幸福を感じています。また、この映画の舞台となるオペラ・ガルニエの建物内部や、レッスン場となるグラン・ホワイエは、その豪華絢爛さにため息が出るほどで、オペラ・ガルニエにオペラやバレエをまた見に行かねば、と思ってしまいました。劇中で「蝶々夫人」「リゴレット」「椿姫」「トゥーランドット」の有名な曲が歌われ、特に最後の「誰も寝てはならぬ」は圧巻でした! さらに、フランスのテノール歌手の第一人者、ロベルト・アラーニャが本人の役で出演していて、「リゴレット」の「女心の歌」を歌い、美しい声を披露してくれるなど、オペラファンにはうれしい映画となっています。殺伐としたニュースが続く今、心を少し温かくしてくれる映画でした。

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