村田京子のホームページ – 「パリタクシー」

105069評判のフランス映画「パリタクシー」(ポスター)を見に行ってきました。46歳のパリのタクシー運転手シャルル(お金に困っていて、休みも取れず、免停寸前の状態)がパリ南東にある郊外の町ブリ=シュル=マルヌから94歳のマドレーヌを乗せてパリを横断する形で、パリ北西のクルフヴォアの老人介護施設まで送る、という一種のロードムービーです。途中で彼女の言うままにあちこちに立ち寄りますが、それは彼女の人生の軌跡をたどる旅でもありました。第二次世界大戦直後のアメリカ兵との燃えるような恋、彼は彼女を残してアメリカに発ってしまいますが、彼女のお腹には子どもがいました。次に知り合った男と結婚するものの、激しい暴力を振るわれ、息子にもその暴力が及んだ時、彼女は恐ろしい行為に出ます。裁判での彼女の決然とした態度(女性と子どもに暴力を振るう男は「夫」とは呼べないと主張)と彼女を理解しない裁判官たちの態度の落差が1950年代の保守的で男性優位のフランス社会を象徴していました。10数年刑に服した後も、最愛の息子はベトナムへカメラマンとして出かけて戦死するなど、彼女の人生は悲惨な人生のように見えます。しかし、それを淡々とシャルルに語るマドレーヌの顔は毅然としていて美しく、彼は次第に尊敬の念と共感を覚えていきます。それと同時に、むっつりした怒りっぽい表情から優しい表情に彼の顔つきが変わっていくのが印象的でした。最後に彼には思いがけない贈り物がもたらされ、人生の新たな出発が可能となります(何となく結末は予感していました)。

タクシーがヴァンセンヌ⇒パルマンティエ大通り⇒アルコル橋、コンシエルジュリ―、裁判所⇒エッフェル塔、シャンゼリゼ大通り、凱旋門⇒ヴァンドーム広場とパリの名所を回る(夜の美しい照明のパリも)のは、パリの観光案内でもあり、17区の洒落たレストランでの夕食も一度行ってみたいと思うようなレストランでした! また、パリの渋滞や今流行のトロティネットが出てきたり、パリの風物詩も盛り込まれていました。しかし何といっても、94歳のリーヌ・ルノー(シャンソン歌手であり女優)の演技の素晴らしさと、ダニー・ブーン(コメディアン)との掛け合いのうまさがこの映画の最大の見どころと言えます。また、是非パリに行ってみたい気になりました。

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