村田京子のホームページ – 大阪公立大学公開講座
大阪公立大学公開講座
「モードを通して読み解くフランス文学」
開催日: 2023年5月17日~7月19日
場所 I-site なんば
コーディネーター 大阪公立大学社会連携課
《案内》大阪公立大学公開講座を下記のように開催予定です。

テーマ:「モードを通して読み解くフランス文学」

開催日時:5月17日~7月19日、毎週水曜日 14時30分~16時 (全10回)

フランスは、ルイ14世時代から「文化の中心」となり、パリは「モードの首都」として現在も威光を放っています。文学において服装が詳細に描写されるようになるのは、19世紀になってからで、「近代小説の祖」と称されるバルザック以降となります。バルザックは服装を職業・生活・思想・性格を表す記号とみなして小説に反映させ、次に続く作家たちもそれに倣いました。本講座では服装を手がかりに、19世紀フランス文学を読み解いていく予定です。

取り上げる作品はバルザック(『ふくろう党』『幻滅』『骨董室』『カディニャン公爵夫人の秘密』)、ジョルジュ・サンド(『アンディヤナ』)、ゾラ(『獲物の分け前』『ボヌール・デ・ダム百貨店』)、ゴンクール兄弟(『シェリ』)です(詳細はプログラムをご参照下さい)。

本講座では、文学テクストは日本語訳を使ってお話をしますので、フランス語ができない方も受講できます。興味のある方はふるって次のサイトまで、お申し込みください(https://www.omu.ac.jp/lifelong-learning/course/event-01658.html)。

《報告》5月24日:5月17日に初回の講座が始まり、70名を越える方々にご参加頂きました。初回は、時間通りに収めようと、早口になってしまい、「もう少しゆっくりお願いします」という声も聞かれ、2回目は少しペースダウンを努めました。2回目は「男装の麗人」と呼ばれるジョルジュ・サンドの作品を取り上げましたが、ロマン主義時代の理想の女性像(「はかない女性」のイメージ)や、変装が女主人公もたらした影響、そして男性服からきた女性用狩猟服(アマゾン)が女性を自立した生き方に導く女性解放に繋がっていることに触れました。会場の方からは「女性解放に至るには時間がかかりますね」という感想を頂きました。とりわけジェンダー指数の低い日本の場合、ジェンダー平等はまだまだ道遠し、というところでしょうか。

7月19日:5月から始まった10回にわたる本講座も本日が最後となりました。本講座ではフランス革命を扱ったバルザックの『ふくろう党』から始まり、最後は19世紀後半のゾラの『ボヌール・デ・ダム百貨店』までの文学作品に現われるモードの変化を辿りました。フランス革命後、「服装の自由」が謳われ、原則的には誰でも自由に服装を選ぶことができるようになりました。その中で、エレガンスを窮めたのが「曰く言い難いもの」を身につけたフォブール・サン=ジェルマンに住む由緒ある家柄の貴族女性たちでした。彼女たちは革命後に台頭してきたブルジョワ階級の女性たちの模範として「モードの女王」となりましたが、19世紀後半の第二帝政期になると、ブルジョワ階級の女性たちが「モードの女王」となり、派手で贅沢なエレガンスを誇示するようになります。オートクチュールが生まれたのもこの時期です。それと同時に産業革命の進展により、大量生産が可能になり、デパートが誕生します。デパートによる「贅沢の民主化」により、大衆消費社会が生み出されました。デパートはその画期的な販売戦略により、近隣の小売業者を駆逐していきますが、21世紀の今、郊外の大型ショッピングセンターやアウトレット、ファストファッションなどの台頭によって、デパートが衰退・消滅しつつあります。このように、モードは社会の変化に応じて変化し、それを反映したのが文学作品だと言えるでしょう。それを読み解く醍醐味を少しでも味わって頂けたならば、幸いです。猛暑が続く中、参加者の皆さまが最後まで熱心に聴講して下さり、本当に感謝しています。また別の機会でお目にかかれるのを楽しみにしています。

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