村田京子のホームページ – 関西バルザック研究会
関西バルザック研究会
第116回関西バルザック研究会
開催日: 2023年3月25日(土)14時15分~17時
場所 近畿大学東大阪キャンパス EキャンパスA館4階 402共同演習室
コーディネーター 松村博史 近畿大学教授
《案内》第116回関西バルザック研究会を下記の通り、開催いたします。今回、村田は昨年の大阪大学での学会でのワークショップ「文学とフェミサイド」でフランス語で発表した内容を主にお話する予定です。ハイブリッド形式ですので、関心のある方は、直接近畿大学に来られるか、またはzoomでご参加下さい。参加希望の方は村田までご連絡下さい。

鎌田隆行:「バルザックと未完の美学」

村田京子:「19世紀フランス文学におけるフェミサイドのテーマ―バルザック、サンド、ゾラ―」

《報告》春の冷たい雨の後の少し肌寒い一日でしたが、15名以上の現地参加者(zoomでは6名)がいて、久しぶりに賑やかな会となりました(3年ぶりにお顔を拝見する方もいて、やはり画面越しではなく、直接お話できるのはうれしい限りです)。まず、鎌田氏のご発表では、バルザックの未完の原稿、作品をどのように捉えるのか、これまでは未完であるがゆえにネガティヴに捉えられてきたが、むしろ作品の無限性をもたらすものであると考えられるようになってきた、というその歴史的経過を辿りました。バルザックの同時代のゴーティエやボードレールから始まり、バルザックの草稿収集に力を入れたロヴァンジュール、さらに学術校訂版(埋もれた作品の発掘、および草稿や改訂の過程を注に詳細に記したプレイヤッド版などの様々なエディションについて)を丁寧に説明した後、未完であるがゆえに永遠に変わり続ける「バルザックにおける未完の現代性」について話されました。現在、電子媒体でのバルザック作品の刊行が準備されているとのこと、研究の幅もさらに深まることが期待できます。

次に村田(写真)が「19世紀フランス文学におけるフェミサイドのテーマ」について、ロマン主義時代から自然主義文学時代に移行するにつれて、より現実的な三面記事的事件を題材に取ったフェミサイドが取り上げられていることを明らかにしました。「フェミサイド (féminicide)」という言葉は、現在ではフランスでも新聞・雑誌、ニュース番組で頻繁に使われる語で、夫や恋人によるDVによって女性が殺害されること、またはストーカー殺人などが「フェミサイド」と呼ばれています。しかし、この言葉が辞書に掲載されるには、2015年の『ロベール辞典』まで待たねばなりません。そこでは「女性であるという理由で女性や少女を殺害すること」と定義されています。19世紀においてとりわけ問題なのは、「激情犯罪」(激しい情熱によって女性を殺害すること)が司法的にも情状酌量されて軽い刑が処せられたことです。今でもオペラなどの人気演目である『カルメン』も「激情犯罪」の典型です。主人公のホセは、恋人のカルメンの愛情が他の男に移ったことに嫉妬、絶望して彼女を殺害する物語となっていて、読者・観客の私たちはホセに同情の気持ちを抱いてしまいがち(カルメン自身も殺されて当然と思っている)ですが、よく考えれば男の身勝手な考えに過ぎません。フェミサイドについて考えることで、これまでの文学作品の読み直しが必要だと思いました。

研究会の後、有志の方々と懇親会を行い、楽しいひと時を過ごすことができました。まだまだマスクが必要な場合もありますが、少しずつアフターコロナの時代になってきたと安堵しています。

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