村田京子のホームページ – フェルメールと17世紀オランダ絵画展

IMG_0001先日、大阪市立美術館に「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」を見に行ってきました(ポスター)。ドレスデン国立古典絵画館にあるフェルメールの絵《窓辺で手紙を読む女》において、女性の背後の壁にはキフェルメールュービッドが描かれた画中画が塗りつぶされていることがX線調査でわかっており、これまではフェルメール自身が消したと考えられていました。しかし、最近の調査により、画中画の上塗りはフェルメールの死後になされたことがわかり、上塗りの絵具層を慎重に取り除く作業の結果、フェルメールが描いた元の絵が現れ(右図)、それが日本でお披露目されました。女性は恋文を読んでおり、キューピッドの絵には「目の前の地面にふたつの仮面が転がっており、キューピッドはそのひとつを踏みつけている。構図のなかに愛の神がいることは本作の意味を大きく変え、偽装や偽善を乗り越える誠実な愛の証しとしてとらえることもできるようになった」(『美術手帖』より)とのこと。「真実の愛」が描かれているようです。同じ色合いの女性の服とカーテン、その光沢や、窓に映った娘の顔、テーブルに敷き詰めた布など、非常に精巧に描かれています。窓枠の青も、修復のおかげか色鮮やかになったと思いますthe_poultry_woman.gabriel_metsu01。フェルメールの作品はこれ1点でしたが、彼と同時期のオランダ画家たちの絵が多く展示されていました。特に気になったのはスリンゲラント「風俗画」で、そこには寓意が込められていること。例えば、スリンゲラントの《若い娘に窓から鶏を差し出す老婆》(左図)では、レース編みをしている女は「勤勉さ」の寓意ですが、鶏を持った老婆は男女の仲を取り持つ役目を持っており、キュービッドの像がそれを象徴しているようです。娘の足元の足温器は感覚的快楽への執着を表し、老婆の誘いに娘が乗る可能性が暗示されています。また、同じく鶏が描かれたメツーの《鳥売りの女》(右図)でも、羽をむしった鶏を売る若い娘と、黒い衣装を着た老婆の構図は、老婆が取り持ち役で、右の喫煙具を手にした男との値段交渉をしているとも取れるそうです。鶏は売春を意味するのでしょう。

その他に、ヘームの静物画《花瓶と果物》(左図)にも心惹かれました。この絵には、色とりどりの美しい花が花瓶に活けられているだけではなく、かたつむりやトンボが写実的に描かれ、ガラスの花瓶には窓が映っています。また、チューリップは1630年ごろマーケットで流行した種類のもの(チューリップの球根が高値で取引され花た)だそうで、当時の時代精神も反映されています。オランダの風景画を見ると、1996年にアムステルダム、デルフト、デン・ハーグを訪れたことを思い出し、ニシンを描いた絵を見て、ニシンのフライを食べた思い出が蘇ってきました。また、ヨーロッパを再訪したいものです。

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