村田京子のホームページ – 『作家たちのフランス革命』(三浦信孝編著)、白水社、2022年

本書は、2021年9月24日、25日に日仏会館主催で行われたシンポジウム「文学作品に現れたフランス革命」(リモート開催)での7名の報告と討論をもとにした論集となっている(総頁244頁)。なお、白水社の雑誌「ふらんす」web版には、執筆者のうちの3人(三浦氏、西永氏、小野氏)の座談会が掲載されている(白水社のサイト参照)。以下、編著者の三浦信孝氏の「緒言」の抜粋。

「本書では、1789年7月14日のバスティーユ襲撃に始まるフランス革命の時期を実際に生きたスタール夫人とシャトーブリアン、1799年、革命のサイクルに終止符を打った「ブリュメール18日」のクーデタの直後に生まれ、ナポレオン帝政期(1804-14)と復古王政期(1815-30)に人となったバルザックとヴィクトール・ユゴー、そして1844年にフランス革命資料を専門とする古書店の息子として生まれ、ドレフュス事件と第一次大戦のあいだの1912年に「恐怖政治」を扱った小説を出版したアナトール・フランス、フランスより一回り下の世代だが、ドレフュス事件から両大戦間の人民戦線期にかけて『7月14日』から『ロベスピエール』まで「革命劇」連作8篇を書いたロマン・ロラン、そして私たちと同時代の作家シャンタル・トマが、マリー=アントワネットを主人公にバスティーユ陥落から三日間のヴェルサイユ最後の日々を回想した小説を取り上げる。

フランス革命は「自由・平等・友愛」を標語にするフランス共和国の出発点であり、革命をどう記述するかはフランスのナショナル・アイデンティティ構築の鍵を握るだけに、ジュール・ミシュレによる『フランス革命史』(1847-53)から今日に至るまで、歴史家による革命史は枚挙にいとまがない。[…]20世紀に入り、歴史資料にもとづく実証的な革命史研究が進むにつれ、科学としての歴史とフィクションとしての歴史小説は分離する傾向にあり、現代においてはユゴーの『93年』やアナトール・フランスの『神々は渇く』に匹敵する歴史小説は書きにくくなっている。[…]

しかし、ユゴーの『レ・ミゼラブル』がミュージカルになっても映画化されても、原作は圧倒的生命力を失っていない。活字文化にこだわる私たちは、革命史の専門家ではないが、フランス革命を主題として取り上げた7人の作家の文芸作品を通して、それぞれの世代にとってのフランス革命、ひいては現代の人間社会にとってのフランス革命を考える機会にしたいと思い、本書を編んだ。」

【目次】白水社サイト案内

【担当部分】

村田京子「第1章 スタール夫人はなぜ、ナポレオンの怒りを買ったのか――スタール夫人『デルフィーヌ』『コリンヌ』」(pp.13-43)

スタール夫人は、18世紀のアンシャン・レジーム期のフランスに生まれ、ルイ16世の財務総監ネッケルの娘として政治の最前線でフランス革命を体験し、革命末期に台頭してきたナポレオン・ボナパルトと対立して国外追放されるなど、激動の時代を生きた作家である。彼女は1793年にマリー=アントワネットを擁護する『王妃裁判についての省察』を出版して以来、政治に関する様々な論考を発表し、革命後も『フランス革命の主要事件に関する考察』を執筆するなど、政治的発信を行ってきた。小説に関しても、彼女の代表作『コリンヌ』は、ナポレオンによって国外追放されていた時期に執筆された作品で、彼女が国外追放の憂き目にあったのも、まさに前作『デルフィーヌ』がナポレオンの怒りを買ったためである。したがって、本章では『デルフィーヌ』『コリンヌ』を通して、スタール夫人における革命観を検証すると同時に、これらの著作によって、彼女がなぜナポレオンの怒りを買ったのか、その理由を考察した。

【本書に関する書評】

『日本経済新聞』(2022年9月10日、小倉孝誠氏)

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