村田京子のホームページ – 「フランス文化を学ぶ会」
「フランス文化を学ぶ会」
「『ゴリオ爺さん』を読む」
開催日: 2022年6月8日(水)より
場所 大阪中央公会堂 B1 第4会議室
コーディネーター 梅村智恵子、武市福之、南千恵子
《案内》大阪女子大学、大阪府立大学での授業公開講座に熱心に参加して下さっていた3人の有志の方々のご尽力で、コロナ禍も少し収まってきたこともあり、中之島の公会堂で読書会を開催することにいたしました。今回は、19世紀の作家で「近代小説の祖」とみなされるバルザックの代表作『ゴリオ爺さん』を翻訳(新潮文庫)で、10回に分けて皆さんと読んでいきたいと思っています。

日時:6月8日、22日/7月13日、27日/9月21日、28日/10月12日、19日/11月9日、23日

毎回水曜日 10時30分~12時(10回:会費7000円)

定員は30名の部屋で、すでに満員となっています。久しぶりになつかしいお顔を拝見できるのを楽しみにしています。毎回ではありませんが、時々、会の報告も行っていきたいと思っています。

《報告》6月8日:さわやかな6月の風が吹く(日中はだいぶ暑い!)時期に講座の初回を迎えました。10時過ぎにはすでに聴講生の方々がぎっしり机に座って待機しておられ、いつもながら皆さまの熱気と熱心さに感銘を受けました。3年ぶりにお目にかかる方も大勢いて、2年のコロナ禍を元気に乗り越えたことに感謝。第1回目ということで、まずはバルザックおよび彼の作品体系『人間喜劇』について簡単な説明をしました。バルザックが死ぬ直前に結婚するハンスカ夫人は、ウクライナの人なので彼女の屋敷がある町の名前も紹介しました。19世紀のウクライナの大貴族は結婚をするのもロシア皇帝の許可が必要で、バルザックも許可を得るために奔走しました(結婚の手続きのために無理をしたのが彼の病状悪化の原因だと思います)。ウクライナは現在だけではなく、過去も様々な侵略を受けてきた国だということを改めて認識しました。『ゴリオ爺さん』はじっくり読み込むと、様々な意味が浮かび上がってくる作品なので、丁寧に読んでいこうと思っています。あっという間に時間がきて、その後、公会堂のレストランで皆さんとお昼を食べながら懇談しました。やはり、PCの画面越しではなく、直接会って話ができる方が楽しいと実感した一日でした。

11月23日:第1期「フランス文化を学ぶ会」も、最終日となりました。本来は『ゴリオ爺さん』を10回で読みきる予定でしたが、特にヴォ―トランが主人公ラスティニャックを誘惑する場面を詳細に分析したりで時間を取り、第二期に少しずれ込むことになりました。この場面は、ゴシック小説や幻想小説に出てくる「悪魔との契約」と関わりがあり、「神に代わって人の魂を自分の思いのままに操る」行為に「悪魔性」が見出せます。その一方で、数年前に日本でも大きな話題となった経済学者トマ・ピケティの『21世紀の資本』にこの場面が大きく取り上げられており、経済学の面でもバルザックの小説が大きな意味を持つことが立証されています。ヴォ―トランが挙げる数字は経済学的にも正しく、19世紀フランスにおいて、労働資本(働いて得る賃金)の上位1%のエリート層が稼ぐ額は、最低賃金の労働者の10倍であるのに対し、相続資本を持つ上位1%は、労働者の25~30倍で、必死に働いてお金を稼ぐよりも、親などから相続財産を受け継ぐ方が恵まれた生活を送れる時代でありました。20世紀の第一次世界大戦以降は、労働資本が相続資本より上回りますが、21世紀になって少しずつ相続資本が労働資本を上回り始め、いわゆる「親ガチャ」の時代になりそうなのが、少し怖いところです。こういった話をしていると、つい時間オーバーになり、ゴリオの死の場面まで辿りつけませんでした。

聴講生の皆さんは最後まで熱心に聞いて下さいました。講座の後のランチも、皆さんとご一緒し、楽しいひと時を過ごすことができました。

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