村田京子のホームページ – 奈良日仏協会講演会(角田茂先生)

角田先生sIMG_452511月23日(土)に奈良日仏協会・放送大学奈良学習センター共催「秋の教養講座」が開かれました(ポスター)。今年度は大阪府立大学の元同僚、角田茂名誉教授が「脳の働きはこのようにして解明された」というタイトルで講演されました(右写真)。角田先生はもともと脳神経外科医で、フランス革命前から19世紀にかけての脳科学の歴史を非常にわかりやすく説明されました。フランス革命期には、近代化学の父ラヴォワジエが質量保存の法則を発見し、化学の発展に貢献しましたが、ラヴォワジエは徴税請負人の家系ということでギロチンにかけられてしまいます。もう一人、革命期に出現したのが近代医学の父ピネルで、彼は精神病患者を収容していたビセートル病院、サルペトリエール病院で患者たちを鎖での拘束から解放したことで有名です。かれは、また、リンネの植物分類学を疾病分類学に応用し、2700種の病気をその種類別に分類し、体系づけたそうです。脳神経学的には、ガルの骨相学(大脳機能局在論の提唱者)が18世紀末から19世紀初めにかけて大流行しますが、「頭蓋骨の形から精神機能を判断できる」と主張したのは、完全に疑似Une_leçon_clinique_à_la_Salpêtrière_02科学として、現在は否定されています。ただ、バルザックを始めとする当時の作家たちはガルの理論を歓迎し、作品の中で扱っています。例えば『ゴリオ爺さん』では、医者の卵のビアンションがゴリオの頭を触って「父性愛の隆起」があると言ってからかう場面があります。また、19世紀後半には失語症やてんかん、犬を用いた大脳皮質運動野の電気刺激実験など行われたそうです。また、18世紀末にメスメルの「動物磁気」説が大流行し、鉄の棒を入れた桶の周りに座って、鉄に患部をあてると磁気によって治るとされました。メスメルの説はフランス科学アカデミーで否定されますが、100年後にシャルコーが催眠療法として採用することになります。シャルコーはヒステリー性片麻痺を催眠療法で治療したことで有名(左図)です。その弟子がバビンスキー(失神した女性患者を後ろで支えているのがバビンスキー)で、彼は催眠療法で治らなかった患者は大脳に器質的障害があると解明しました。足の裏にピンでこすった時、親指が反ると障害があるということがわかるそうです(赤ちゃんはこのバビンスキー反射があるが、生後1年で消失するそうです)。東大寺の仁王像の一つがこのバビンスキー反射を示しているとか。一方、催眠療法で治った患者に関してはフロイトがさらに考察を進め、「無意識の発見」につながっていくわけです。いろいろ示唆に富むお話で、2時間があっという間に過ぎました。講演会の後の懇親会も盛り上がり、非常に充実した一日を過ごすことができました。

HOME | PROFILE | 研究活動 | 教育活動 | 講演会・シンポジウム | BLOG | 関連サイト   PAGE TOP

© 2012 村田京子のホームページ All Rights Reserved.
Entries (RSS)

Professor Murata's site