村田京子のホームページ – 伊田久美子教授退職記念講演

ポスターsIMG_4270本学研究科の同僚で、女性学研究センター長を長年務めてこられた伊田久美子教授が今年3月で定年退職となり、その記念講演およびフェミニズム鼎談「資本主義批判としてのフェミニズム」(ポスター)をセンター主催で、3月29日に開催しました。年度末の忙しい時期にも関わらず、伊田先生の講義に100名もの方に参加してもらい、これも伊田先生のご人徳のおかげだと感激しました(右写真は、講演中の伊田先生)。伊田先生は、労働とジェンダーに関して長年研究されてきましたが、その原点は1970年代のイタリア・フェミニズム研究で、当時、イタリアでは家事労働賃金運動が起こり、無償のものとされた家事も労働の一部として賃金を払うべきという主張でした。日本でもテレビドラマで話題になったように、現在では家事労働がお金に換算するといくらになる、と見積もったり、家事・育児がどれほど大変な労働なのか、大部分の人が理解できるようになりましたが、70年代当時はマルクス主義者やフィミニストたちからも批判され、この運動は消滅してしまったそうです。ともあれ、1974年3月8日の国際女性デ―にはストライキ(家事労働、子どもの世話、買い物、性的サービス、売春のストライキ)を呼びかけ、家事労働を担う女性が外で働く労働者とともにストライキをしてはじめて、ゼネラルストライキとなる、と主張したとか。非常に斬新な考え方で、「近年再登場したフェミニズム運動は、その規模においても主張やスタイルにおいても家事労働賃金要求運動と多くの共通点」を持ち、70年代の人々にとってはラディカル過ぎたのかもわかりません。時代とともに女性たちも個としての主体性を持ち、Metoo運動のように、各個人がセクハラを告発する「一人称の主張」が生まれてきたこと、「もはや女の口を塞ぐことはできない」という伊田先生の言葉に感銘しました。70年代には労働者の隊列に家事労働者やフェミニストが加わろうとすると冷笑されのが、今やフェミニストのストライキの呼びかけに労働組合が参加する、という逆転現象が起きているそうです。伊田先生は70年代のチラシの貴重な図版や現在のイタリアでの国際女性デーのデモを写した写真など、視覚的にも大変興味深いお話をされました。

sIMG_4280伊田先生の講演の後に、元大阪女子大学女性学研究センター専任研究員(現在:お茶の水女子大学名誉教授)の足立真理子先生と東京大学名誉教授の上野千鶴子先生がコメントおよび、三人での討論が行われました(写真)。sIMG_4286上野先生曰く、「マルクス主義フェミニズムの三羽ガラス」の親友が揃った貴重な機会となりました。三人のお話の中で一番印象に残ったのは、グローバリゼーションが進む現在、ネオリベラリズムを推し進める企業はもはや、労働力の再生産(女性は新しい労働力を産む性、男性は継続して働く)を望まず、あるもの(移民労働者など)を使う傾向になってきており、それにどのように対処していくかが今後の課題になる、という問題でした。最後に花束贈呈(写真)がありました。伊田先生、長年、センターの活動や学生の教育など、いろいろお世話になりました。今後のさらなるご活躍を期待しています。

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