村田京子のホームページ – 女性学講演会「文学とジェンダー」の開催
「女性学講演会」(大阪府立大学女性学研究センター・「文学とジェンダー」プロジェクト共催)
「文学とジェンダー」(第2回)
「文学、演劇、ジェンダー」
開催日: 2018年2月2日(土)14時~17時
場所 大阪府立大学 I-siteなんば
コーディネーター 村田京子
《案内》女性学講演会第2部「文学とジェンダー」(第2回)を下記の通り、開催します。興味のある方はふるってご参加下さい(詳細は女性学講演会「文学とジェンダー」(2018)をご参照下さい)。

日時:2019年2月2日(土)午後2時~5時

場所:大阪府立大学 I-siteなんば 2階 C2・C3

2時~3時:村田京子 「マリー・ドルヴァルとジョルジュ・サンド―サンドにおける理想の女優像―」


3時15分~3時15分:白田由樹(大阪市立大学准教授) 「サラ・ベルナールの挑戦―偉大な芸術家としての女優―」


4時30分~5時: 講演者との質疑応答

《報告》立春間近ということもあってか、穏やかな日和の中(ただ、目下、インフルエンザが猛威をふるっている中)、大勢の方が講演会に参加して下さいました。まずは村田が19世紀前半のフランスでロマン派劇を代表する女優として活躍したマリー・ドルヴァルの生涯を取り上げた後、ドルヴァルと親しかったジョルジュ・サンドとの関係、およびサンドの作品に登場する女優とドルヴァルとの関係を探りました(写真)。19世紀当時、女優は「淫らな生活の女」として、娼婦と同一視され、社会的偏見の的となっていたという背景に触れた後、ドルヴァルは幼い頃から舞台に上がり、誰からの援助も受けずに三人の娘を養育し、生活費もほとんど彼女の稼ぎで賄っていたことを明らかにしました。古典劇の牙城コメディー・フランセーズの劇団員との軋轢(彼女は「大衆演劇の女優」として格下に見られていた)や、彼女の代表作(デュマの『アントニー』、ユゴーの『マリヨン・ド・ロルム』、ヴィニーの『チャタートン』)を概観した後、サンドの女優観(女優という職業を貧しい女性が自立した生活を送るための手段とみなす)や、サンドがドルヴァルのために書いた戯曲『コジマ』がなぜ失敗に終わったのかを、ヴィニーの『チャータートン』と比較しながら見ていきました。最後に、ドルヴァル晩年にサンドが書いた小説『ルクレチア・フロリアニ』の女主人公、元女優のルクレチアがドルヴァルにそうあって欲しかった女優像が反映されていることを明らかにしました。

次に白田先生が、19世紀後半のフランスにおいて一世を風靡したサラ・ベルナールを取り上げて話をされました(写真)。サラの生い立ちについては、高級娼婦のような生活を送っていた母親の元に育ちながらも、美しい声の才能ある女性として、コンセルヴァトワール(国立音楽演劇学院)で勉強し、コメディ・フランセーズでデビュー。ここまではドルヴァルよりは順調な女優業のスタートですが、持ち前の気の強さで他の劇団員と衝突して自らコメディー・フランセーズを飛び出した、というのはいかにもベルナールらしい! ベルナールの場合、男性の視点に立った女優観(女性は「創造者」ではなく「模倣者」に過ぎず、「女優」の職業は女性に合っていると考える)に逆らうことなく、しかし自らの意志を通すところにベルナールの生き方があるようです。さらに自らの劇団を結成してアメリカ各地を回るなど、その積極性はドルヴァルにはないもののではないかと思えます(ただ、ドルヴァルの頃はアメリカ巡業など夢の話でしたが)。昔から俳優は教会から排斥され、墓地への埋葬を拒否されましたが、19世紀後半になってやっと教会も信者として受け入れるようになったことなど、その経緯がよくわかりました(しかし社会的偏見は残ったようですが)。サラはスクリーブの戯曲で18世紀に実在した女優を主人公とした『アドリエンヌ・ルクヴルール』の筋書きを変えて演じるなど、劇作家となったり、または彫刻家としてサロンに出品したり、他の芸術分野でも才能豊かな一面を見せています。しかも普仏戦争の時にはオデオン座を野戦病院として看護活動に専念、晩年には右足を切断しても舞台に上がるなど、そのエネルギーには脱帽です。

マリー・ドルヴァル、サラ・ベルナールという19世紀フランスを代表する女優、さらに女性作家ジョルジュ・サンドとの深い関わり(ベルナールもサンドの『棄て子フランソワ』を演じている)がわかり、男性優位の社会において天分ある女性芸術家の連帯が実感できました(写真は講演者2人で撮ったもの)。聴講の方々も、最後まで熱心に聞いて下さり、盛会のうちに終わりました(参加者60名)

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