村田京子のホームページ – シャンソン研究会(2018.5.12)

アンナ・カリーナシャンソン研究会に参加するため、阪大に行ってきました(方向音痴で建物を間違え、少し遅れてしまいました)。今回は、常連発表メンバーの高岡さん、福田さんのほかに、ベルギー圏の研究をされている岩本さんも加わり、3人の発表でした。まず、ヌーヴェル・ヴァーグの映画を中心に研究されている福田さんが、「歌手としてのアンナ・カリーナ」ということで、ミュージカル映画Annaを中心に話されました。フランスでミュージカル映画というと、ジャック・ドゥミ監督の『シェルブールの雨傘』(1964)が有名で、それ以降はアメリカ映画しかないように思えますが、ピエール・コラルニックというテレビのプロデューサーが作った「アンナ」(1967)というミュージカル(テレビでの放映)が大ヒットしたそうです。そこで歌っているのがゴダール映画のミューズとも言える、女優のアンナ・カリーナ(写真)で、作詞作曲がゲンズブール。アンナ・カリーナはやや舌足らずの口ぶりで、それがコケティッシュな雰囲気を漂わせています。特に、「何も言わないで (Ne dis rien)」をゲンズブールで二人で歌っている動画は眼の大きな彼女の顔がアップになって、その視線に目が釘付けになるほど、魅力的でした。次に高岡さんが、カロジェロカロジェロという歌手(作曲もする)(写真)の紹介(高岡さんが風邪で声が出なかったので、私が代読しました)。シシリア系の移民の子どもで、23歳の時にフランス国籍を取った、グルノーブル生まれの男性。カロジェロは1990年代からCDを出していますが、1999年にソロになってから出したアルバムが、とりわけそのメッセージ性が強くなったそうで、そちらを主に取り上げての発表でした。作詞はいろいろな人に頼んでいたようですが、ZazieとMarie Bastideが圧倒的に数が多く、とりわけMarieとは人生のパートナーともなり、最近はMarieとのコラボが多いそうです。初めは歌手としての政治的参加には消極的だったのが、子どもの父親となってから、政治や社会に積極的に参加するようになり、「暴力、親の不在、同性愛、複合家族」について歌うようになったそうです。2012年にグルノーブル郊外で起きた殺人事件の被害者(15人の少年からリンチされ、惨殺された二人の少年たち)を扱った「場所が悪かった、あの日」では、美しいメロディにのって「もう二度とこんなことのないように」と歌われます。とりわけ印象に残ったのが、「花火」という曲で、これは花火大会に初めて参加した幼い男の子の感動を歌ったものです。2016年7月14日の「革命祭」の時に、ニースで花火を見ていた見物客たちがイスラム国のテロリストが運転する大型トラックにはねられて、86名が死亡、458人の負傷者を出した悲劇が起こります。その1年後に犠牲者の追悼式典があった時、遺族の強い希望でカロジェロが「花火」を歌うことになりますが、最終連は涙で歌えなかった、というもの。その時の映像を見せてもらいましたが、会場中が感動で涙しました。歌の力はやはり強いと思います。最後に、岩本さんがベルギーの国歌についての話をしてくれました。ベルギーは連邦国家でフラマン語(オランダ語)圏、フランス語圏、ドイツ語圏と分かれているので、国歌は何語で歌っているのだろう、という疑問からのご発表。サッカーのワールドカップなどを見ても、国歌を歌っている選手はあまりいないようで、応援団はそれぞれの言語で歌っているようです(そもそも、国歌をきちんと歌える人は少ないそうです)。さらに、曲自体、フランス国歌(マルセイエーズ)に少し似た感じで、聞いてもあまり印象に残らず、国が変わると違うものだと思いました。どの発表も、非常に面白く、楽しいひと時でした。

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