村田京子のホームページ – 「文学とジェンダー」共同研究ミニシンポジウムの開催
「文学とジェンダー」ミニシンポジム(人間社会システム科学研究科人間科学専攻共同研究プロジェクト)
「文学とジェンダー」
開催日: 2017年11月2日(木)
場所 大阪府立大学A15棟2階中会議室
コーディネーター 村田京子
《案内》 今年度の「文学とジェンダー」共同研究プロジェクトのミニシンポジウムを下記の通り、開催いたします。今回は中国思想専門の教員が、前漢時代の書『胎産書』に基づき、当時の女性の出産や胎教などについて、次に日本文化専門の教員が近松門左衛門の浄瑠璃『女殺油地獄』における女性像についてお話をします。ふるってご参加下さい(詳細は ポスターを参照のこと)。

2時~3時:     大形徹 「馬王堆の『胎産書』」

3時10分~4時10分 河合眞澄「『女殺油地獄』の女性たち」

4時20分~5時    自由討論

《報告》秋晴れの気持ちの良い天候の下、ミニシンポジウムを滞りなく行うことができました。まず、大形先生(写真)が前漢時代の文献『胎産書』が馬王堆から出土された経過の説明がありました。こうした文献は、新たに出土、発見されるにつれ、これまでの解釈が一変する可能性があり、研究者としては大変な状況のようです。『胎産書』は文字通り、胎児の成長、胎教、胞衣(えな)の処理などに関することを記したもので、不思議なことに漢代の書物目録『漢書』には掲載されていないとか。お話の中で特に興味深かったのは、胎児の成長が五行思想に基づき、水⇒火⇒金(筋肉を作る)⇒木(骨を作る)⇒土(皮膚を作る)、さらに9ヶ月目で「石」(体毛)を作り、10ヶ月目で「魂」を入れる、というもの。また、胞衣をどの方角に埋めるかで、寿命を延ばすことができる、という占いのようなものも記載されていること(夫が胞衣を埋めにいくそうです)、さらに男の子を生み分けるには何を食べればいいのか、など今でも民間伝承にあるようなものもすでに載っているそうです。次に、河合先生(写真)は歌舞伎や人形浄瑠璃でしばしば演じられる『女殺油地獄』(近松門左衛門作)について、男の主人公、与兵衛を巡る女性に焦点を当てて話をされました。不良息子の与兵衛が借金の返済に困り、幼馴染のお吉(油屋の豊島屋の女房)に金を無心し、断られたために彼女を殺して金を奪って逃げる(最後は捕まる)、という場面。その時に二人が格闘して油まみれになった与兵衛がすてんと転ぶ場面(特に人形浄瑠璃では舞台の端から端まですべるのが醍醐味だとか)が有名だそうですが、何の咎もないのに無残に殺されるお吉に脚光が浴びないのは可愛そうな気がしました。これも当時の一種の女性蔑視(女性を低く扱う)と言えるのかもしれません。その他には夫の手前、息子を勘当したものの、こっそりお吉を通して息子に金を渡そうとする母親のお沢の親心もいかにも近松の世話物と言えるでしょう(母親だけではなく、奉公人上がりの継父が義理の息子に遠慮している様子、父親も勘当した息子にこっそりお金を渡そうとお吉のもとを訪れるなど、人情が描かれています)。お二人の話の後、活発な質疑応答が行われ、盛会のうちに終わりました(参加者45名)。

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