村田京子のホームページ – ワークショップの開催
日本フランス語フランス文学会秋季大会
ワークショップ「19世紀フランス文学における「男らしさ」の危機」
開催日: 2017年10月29日(日)
場所 名古屋大学
コーディネーター 梅澤礼 富山大学准教授
《案内》日本フランス語フランス文学会秋季大会において、ワークショップを行います。問題提起としては、次のようなものです(コーディネーターの梅澤先生の文章から引用)

「男らしさvirilitéとは、単なる生物学的な性質とは異なり、男が維持し示すべき身体的・道徳的・性的な特質のことをいう。2011年に出版され、現在邦訳がなされている『男らしさの歴史』は、中世から現代までを専門とする総勢40名の研究者による全3巻の大作であり、このテーマがフランスの歴史文化においてどれだけ豊かな鉱脈であるかを物語っている。

このうち19世紀を舞台にした第2巻では、男らしさがさまざまな場所で誇示されていたようすが、「男らしさの勝利」という副題のもと示されている。しかし同時代の文学作品に目を向けてみると、必ずしもこのことを裏付けるものばかりとは限らないというのが実際のところである。19世紀フランス文学において、男らしさはどのように描かれていたのか。それはどのように、第3巻の副題ともなっている「男らしさの危機」を準備したのだろうか。」

3人のパネラーがそれぞれ、「男らしさの危機」について語ります。囚人文学を専門とされている梅澤先生は、「囚人の証言やパノラマ文学、医学研究」などからの分析、高岡先生はサンドの『アンドレ』を中心に、virilitéを発揮できていない男性に焦点を当て、村田が両性具有的存在と「男らしさ」について語りたいと思います。興味のある方は是非、ご参加下さい(詳細は、2017秋季大会プログラムを参照のこと)。

《報告》台風22号が週末に近畿、東海地方を襲う中、雨にも関わらず、30名以上の方々が参加して下さいました(ワークショップが同時間に8つ重なったため、10名程度しか参加者がいないのではないかと恐れていたのですが、30部用意した資料が足りないほどでうれしい驚きでした)。まず、村田が19世紀における「男らしさ」の定義をアラン・コルバンなどの文献に従って行ったあと、「男らしさ」を視覚化したダヴィッドの《ホラティウス兄弟の誓い》(左図)における「男らしい」男性像を見せた後、それとは正反対のダヴィッド《バラの死》(右図)のバラ像(女性化されたエロチックな男の身体)を見せました。バラもまた革命期には「男らしさ」の理想像であったことを説明し、そこには18世紀の美術史家ヴィンケルマンの影響があることを明らかにしました。こうした「女性化された」男性、いわば両性具有的な存在をロマン主義文学(アンリ・ド・ラトゥシュ『フラゴレッタ』、テオフィル・ゴーチエ『モーパン嬢』、バルザック『サラジーヌ』『金色の眼の娘』)の中から抽出し、それぞれ「男の理想像」として捉えられながらも一方では「怪物」的存在とも見られていることを明らかにしました。しかし19世紀後半になると、両性具有的存在はもはや男の理想像ではなく、「退廃」「堕落」の表徴として「男らしさ」の危機とみなされていきます。次に、梅澤先生が囚人文学に現れる「男らしさ」について話をされました。男は牢獄に入ると犯罪者集団の中で鍛えられて逞しい「男らしさ」を発揮することがある一方、逆に「女の子」のような華奢な青年は牢獄仲間の同性愛の餌食にされて健康を害することもあり、「男らしさ」の対極に至ることもあること、それを様々な隠語(例えば tanteという言葉は「叔母」ではなく「おかま」を表すなど)や元囚人の経験談など、様々な文献を駆使して明らかにされました。最後に高岡先生は、『男らしさの歴史』の出版以降に出て、この著作とは少し違う視点から批判的に検証した Masculinités en révolution de Rousseau à Balzac という論文集に触れ、masculinité と virilité との違いおよび交差する点を定義し直した後、「男らしい男」と「女らしい女」の間にある存在を図式を用いて説明されました。その中で、ジョルジュ・サンドの『アンドレ』の同名の男性主人公がいかに「男らしくない」か、そして、この小説がハーレクイン小説のような「ロマンス小説」のがっかり版、「反ロマンス小説」であるかを立証されました。ただ、女主人公のジュヌヴィエーヴが「知識」を求め、自立を目指す女性であるというのがサンドの特徴と言えるでしょう。会場からは様々な質問、意見が寄せられ、時間をオーバーするほど盛り上がりました。

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