村田京子のホームページ – 「ベルギーのフランス語」

ベルギーベルギーのリエージュ大学教授 Laurence Wéry教授が府大に視察に来られました。リエージュ大学とは学術交流協定を結び、来年以降、リエージュ大学の学生さんとの交流が始まる予定です。それに先立ち、日本におけるフランス語教育がどのようなものか知るために、本学におけるフランス語の授業を見学に来られました。私の担当する授業(1回生の文法の授業)にも来られて自己紹介されましたが、ベルギーと言えばチョコレート(ゴディバやレオニダスなどは日本でも有名)、ビール(村ごとに特産のビールを醸造していて900種類以上のビールがあるそうです)、漫画は「タンタンの冒険」で、そのあたりは知っている学生もいました。言語は複雑で、北の地域がオランダ語から派生したフランドル語圏(アニメで有名な「フランダースの犬」はフランドル地方のアントワープが舞台となっています)、南がフランス語圏、東に小さな領域ですがドイツ語圏と3つの言語が交錯しています。しかも、ブリュッセルは北のフランドル語圏に属していながらフランス語圏。したがって、ブリュッセルは国の首都であり、同時にフランドル語圏の首都とフランス語圏の首都で、EUの首都も兼ねるという4つの首都になっています。現在は北の工業地帯が栄え、南のフランス語圏との格差は大きくなるばかりのようです(失業率も北が5%、南が10%。テロリストの温床とも言われる移民地区を持つブリュッセルの失業率は18%に上るとか)。

Wéry先生の「ベルギーのフランス語」(ポスター)についての講演にも参加しました。先生によると、ベルギーのフランス語とフランスのフランス語との違いは3つの要因―①古いフランス語を守っている。例:90をquatre-vingt-dix ではなくnonanteと呼ぶなど。②ドイツ語の影響。例:市長(maire)をドイツ語風にbourmestreと言う。③フランドル(オランダ語)の影響―によるそうです。また、フランス語で「知事」という意味のpréfetはベルギーでは「校長先生」を意味し、「高校」という意味のフランス語lycéeはベルギーでは「女子校」という意味になるとか、興味深いお話も伺いました。その上、フランスとは違い、カトリック系の学校も「私立」ではなく「公立」で宗教と政治の分離はなされていないとか。学校は二つのコースー聖書を学ぶ授業のあるカトリック系と宗教色のない、またはイスラム教など他の教義を学ぶコース―に分かれ、学生がどちらかを選択するそうです。そのあたりは、政教分離(laïcisation)が原則で学校など公的な場所ではイスラム教のヴェール着用禁止のフランスとは全く違うベルギーの特色が垣間見られました。EU圏の大学生は母語ではない言語を話す他のEU圏の国に必ず6か月~1年留学すること(エラスムス計画)が決められていて、リエージュ大学でも多くの外国人学生を迎えているそうです。今後、日本とベルギーの大学との若い人たちの交流が進むことを願っています。

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