村田京子のホームページ – ノーベル化学賞受賞者ホフマン教授の演劇上演

s%e3%83%9d%e3%82%b9%e3%82%bf%e3%83%bc1981年にノーベル化学賞を受賞(福井謙一教授と共同受賞)したコーネル大学名誉教授ロアルド・ホフマン氏が書いた劇の上演を見に、名古屋工業大学まで行ってきました。ホフマン氏はこれまでにも2作、戯曲を書かれていてこれが3作目でタイトルは「これはあなたのもの」(ポスター)。氏は70年以上前にポーランド(現ウクライナ)に生まれたユダヤ人で、ナチスの侵攻によってユダヤ人迫害があった時代、母親と6歳のホフマン氏はウクライナ人に匿われ、屋根裏部屋で約2年間隠れて過ごし(ただし父親はナチスによって殺害された)、11歳の時にアメリカに渡って安住の地を得た、という数奇な人生を送った方で、その経験をもとに書いたのが本戯曲です。物語は1992年、アメリカのフィラデルフィアに住むユダヤ人の母フリーダと息子のエミール、エミールの妻テイマーと17歳の娘ヘザー、13歳の息子ダニー。それと1943-44年のウクライナのグリニヴ(フリーダ、エミール母子が屋根裏部屋に隠れている)が交差して演じられています。自分の夫や妹を死に追いやったウクライナ人たちを「人殺し」として罵る母親のフリーダと、自分たちを匿ってくれたウクライナ人のオレスコへの恩を感じる息子のエミール、と二人の人物を中心に物語が展開します。オレスコの娘アラが両親の遺品の中にフリーダの結婚指輪を見つけ、それを返すために一家を訪れることによって、これまで封印してきた古い記憶が呼び起こされ、大きな波紋をもたらす話です。フリーダがアラがわざわざ届けてくれた自分の結婚指輪を「匿ってもらう代償としてオレスコに渡したもの」だから「これはあなたのもの」と言って受け取らない、というのが彼女の複雑な心境を物語っています。劇の最後に「忘却」の箱をそれぞれ火にくべる、という終わり方もいろいろ解釈でき、深い余韻を残すお芝居でした。

simg_2716今回の劇は知り合いの名工大の川島慶子教授が日本での上演を実現したもので、名古屋の劇団が演じていますが、最初の天国のシーンは名工大の学生たちが演じ、さらに舞台装置も学生たちの手作りだそうです(写真左:役者さんたちとホフマン先生、右にいて通訳しているのが川島さん)。ホフマン先生と少し話ができましたが、ものすごく気さくな方で、フランス文学はスタンダール、ゾラなどが愛読書とのこと(劇中にも主人公と同じ名のエミール・ゾラに言及され、ドレフュス事件の話が少し入っていました)。写真右はホフマン先生を挟んで、私と一緒に観劇したいおりさんと3人simg_2717で撮ってもらいました。このお芝居は来年さらに本格的に全国を回る(著名な演出家が担当し、有名な女優さんがフリーダ役を演じるとか)そうで、楽しみです。

HOME | PROFILE | 研究活動 | 教育活動 | 講演会・シンポジウム | BLOG | 関連サイト   PAGE TOP

© 2012 村田京子のホームページ All Rights Reserved.
Entries (RSS)

Professor Murata's site