村田京子のホームページ – 「カウントされない生/命」
2016年度男女共同参画事業
「カウントされない生/命」
開催日: 2016年7月16日(土)
場所 大阪府立大学中百舌鳥キャンパスB3棟 119講義室
コーディネーター 浅井美智子 大阪府立大学教授
《案内》大阪府立大学女性学研究センター主催で、下記のシンポジウムを開催の予定です。「対外受精等の生殖補助技術は産ませる技術である一方、死産児や人口妊娠中絶児を生み出しています。また、目に見えにくい貧困層の子どもを生み出しているのも事実です。前者は生殖における身体の担い手である女性に、また、後者は多くの場合、母親の貧困に起因しています。本シンポジウムでは、四つの視点から生殖子育てにおいて女性たちがどのように翻弄されているのか問題提起し、議論したいと思います」(主催者の言葉から)。関心のある方は是非ご参加下さい(詳細は「カウントされない生/命」ポスターを参照のこと)。

日時: 2016年7月16日(土) 13時30分~16時30分

報告タイトルと報告者

1.「望んだ妊娠から消される子ども(中期中絶から死産児へ): 山本由美子(大阪府立大学講師)

2.「不妊治療の現場から消えていく受精卵」: 居永正宏(大阪府立大学非常勤研究員)

3.「みえない母子の貧困と孤立」: 梅田直美(奈良県立大学講師)

4.「売買される卵子・妊娠出産」: 浅井美智子(大阪府立大学教授)

《報告》梅雨明けも間近な土曜、炎天下の中、20名以上の方々が集まってくれました。4人のパネラーによって20分ずつの報告がありましたが、それぞれ内容の濃い、興味深い問題提起でした。まず、山本さんは妊娠中絶に関して、特に出生前検査および中期中絶(人口中絶)の「処遇」を日本、アメリカ、フランスの例を挙げて報告されました。医療技術の発達で、妊娠23週目の手のひらに乗るような小さな赤ちゃん(283g)もちゃんと育てることができるようになり、それゆえ、胎児に障害などがあった場合、生まれてこないよう、「医療化された子殺し(人工中絶)」が起こっているとのことです。医療の抱える悲しい矛盾と言えるでしょう。次に、居永さんの報告によると、生殖補助医療の研究に必要なヒトの受精卵等の入手法として、不妊治療の際の「余剰胚(余剰受精卵)」と「余剰卵(余剰未授精卵)」(採卵したが不妊治療に使えなかったもの、使わなかったもの)を使うことが多いそうです。しかし、日本では受精卵等の入手や提供を直接規定した法律はなく、生殖医療研究のための「余剰胚」の利用についての議論が抜け落ちている、という指摘で、確かにそれに関して法律の整備をするべきだと思います。3番目の梅田さんは、日本において「みえない/みえにくい」母子の貧困と孤立の問題を、戦後日本の「子捨て」「子殺し」「母子心中」をめぐる言説分析を軸として検討されました。その結果、「貧困による子殺し」から「現代日本の子殺し(既婚の母親のノイローゼなど精神的疾患によるもの)」へと言説の焦点が移行し、それによって、「母子の孤立」を「貧困」と切り離して論じるようになったそうです(それは大問題だと思います)。最後に浅井さん(写真左)が、対外受精の技術の発達により、卵子や精子、妊娠・出産が売買の取引となって「商品化」し、グローバルな市場を形成している現状を報告されました。無償・有償で卵子を提供した女性、代理出産をした女性たちがその後、どうなったのか(一部の女性は卵巣肥大や排卵誘発剤による後遺症などを患っているのに)、という追跡調査が全くなされておらず、実態がわからないそうです。海外では「子どもが産めない女性への同情」や「学費を稼ぐため」に安易に卵子を提供する女性がいるそうですが、そのリスクを知らないまま提供しているのは大変危険なことだと思います。「女性の生殖身体のモノ化現象」は今後さらに問題となっていくことでしょう。4人の報告の後、会場からも活発の質問が出てディスカッションすることで、さらに問題意識を深めることができました(写真右:4人の報告者)。

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