村田京子のホームページ – ディアズ先生の講演
バルザック・サンド合同研究会
バルザックとサンド
開催日: 2016年5月28日(土)
場所 学習院大学西1号館3階305
コーディネーター 西尾治子、村田京子
《案内》日本フランス語フランス文学会2016年度春季大会が5月28日、29日と2日にわたって学習院大学で開催の予定です。その一環としてフランスから招聘されたジョゼ=リュイ・ディアズ パリ第7大学名誉教授と、その奥さまのブリジット・ディアズ カーン・ノルマンディ大学教授に、バルザック研究会とジョルジュ・サンド研究会の合同研究会において、バルザックとサンドの様々な関わりについて話をして頂くことになりました。ジョゼ=リュイ・ディアズ氏は長年、バルザックをはじめとする19世紀フランス・ロマン主義文学を研究され、現在「19世紀ロマン主義研究協会」の会長を務めておられます(ちなみにディアズ氏には、村田がパリ第7大学に博士論文を提出した時に、その審査委員会の委員長を務めて頂き、お世話になりました)。一方、ブリジット氏は19世紀フランス文学作家における書簡を中心に研究され、ジョルジュ・サンドの国際シンポジウムで毎回発表されるなど、活発に活動されています。ご夫婦とも多くの著作、論文を出版されています。今回は下記のタイトルでご発表の予定です(フランス語のみ)。興味のある方は是非ご参加下さい。

José-Luis Diaz : « Balzac et Sand : deux écrivains en vitrine (1831-1850) »

Brigitte Diaz : « Balzac et Sand : deux romanciers en correspondance »

《報告》5月28日に、日本のバルザック研究者、サンド研究者の前でディアズご夫妻がバルザックとサンドの関連について、講演されました。まずディアズ氏(写真)は二人の作家がメディアにおいてどのような評価を得たのか、を明らかにされました。氏によれば、ジャーナリズムが発達した19世紀において、作家は自らの作品だけではなく、私生活が公にされるようになり、それがスキャンダルを引き起こしたり宣伝として使われるようになります。それはまさに、SNS などが発達して無名の個人の私生活が露わになる現代社会の先駆けとも言えるでしょう。しかも、ロマン主義の詩人たちは僧侶に代わって民衆の魂を導く「聖なる職務」を担っているとされましたが、小説は風紀を乱す「不道徳」な文学ジャンルとみなされ、「流行作家」バルザックやサンドは私生活が丸見えの「ガラスの家」に住んでいるとされたわけです。そうした時期にシャトーブリアンやサンドなど、様々な作家の自伝が出版されたのも、こうした風潮の一環である、という氏の指摘は大変興味深いものでした。次にブリジット先生は、書簡を通してバルザックとサンドの関係を探り、二人が深い友情で結ばれていることを明らかにされました。ただ、サンドとフローベールが交わした手紙はその書簡集が出版されるほど、数が多かったのに対して、バルザックとサンドの間には30通ほどしか残っていないことは意外でした。二人の関係は量より質、ということで互いに本の献辞を捧げあったり、バルザックがノアンの館を訪れるなど、直接的な交流があったことは確かです。ただ、残念なのは、バルザックがサンドの才能を認めながらも、彼女をモデルにした登場人物カミーユ・モーパン(『ベアトリクス』に登場する女性作家)が、最後には修道院に自ら引きこもり、「沈黙」するのは、やはり女性作家に対するバルザックの恐れだったのでしょうか。ともあれ、2時間、バルザックとサンドの世界に浸る濃密な時間を過ごすことができました。会の後、ご夫妻を交えて皆で昼食を共にし、文学談義に弾みました。

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