村田京子のホームページ – ルーヴル美術館展

京都市美術館で開催されている「ルーヴル美術館展」と同じく同時開催している「ルネ・マグリット展」を見に行ってきました。ルーヴル美術館展はアカデミー絵画でも下位に位置し、絵の大きさも小さいため、あまり注目されてこなかった「風俗画」(庶民の日常生活を描いたもの)にクローズアップしたものでした。「風俗画」と言えば、17世紀オランダ絵画が一番に思い浮かびますが、この展覧会ではそのルーツとして古代エジプト、ギリシア、ローマの壺がプロローグとして展示され、その後、絵画のジャンルの説明として「歴史画」(神話、聖書を題材にしたもの)があり、「労働と日々」として商人や農民などを描いたものが続きました。その中で興味を引いたのが、マセイスの《両替商とその妻》(写真左)。金貸しは重りと硬貨、宝石、真珠の価値を天秤で量っているところで、解説によると「魂の重さ」を喚起させます。妻は時祷書を広げているものの、視線は夫の手先にあり、お金の方に関心が向いている様子。後景の物はそれぞれ象徴的な意味を持っている(消えた蝋燭、果物は原罪の暗示とか)そうです。写実的な描写の中に象徴性(宗教性)が見出せる絵画で、しかも鏡に映り込んだ光景(窓の外の風景および窓の傍らに立つ人物)が素晴らしい!今回の目玉はフェルメールの《天文学者》(写真右)―《地理学者》と対をなす―でしょうが、これは1996年にデン・ハーグでフェルメール作品21作が一堂に会した時、すでに見たのであまり感動はありませんでした。しかしフェルメールの「青」は吸い込まれるような色で改めて感動しました。17世紀のオランダ風俗画に触発されて描いたのが19世紀の画家ドロリングの《台所の情景》(写真中央)で、この当時、オランダ絵画のリヴァイヴァルがフランスで起こり、文学においてもバルザックの作品をはじめとして「私生活」が脚光を浴びるようになるわけです。「アトリエの芸術家」のコーナーではシャルダンの《猿の画家》(モデルを模写するだけの「猿まねの画家」という意味)が皮肉がきいていて面白かったです。

一方、マグリット展ではさすがシュルレアリスムの画家! タイトルと絵の内容が一致せず、しかし哲学的な思惟が感じられる絵画でした。マグリットの場合、幾つかの気に入りのパターン(「青空に白い雲」「山高帽の男性」「きり絵細工のような人間」)を組み合わせた構図が多かったですが、その中で一番印象に残ったのは《ピレネーの城》(写真右下)で、海の上に浮く大きな岩石の上に石の城が乗っているのがシュールでインパクトがありました。

美術鑑賞の後は、八坂神社の境内にあるフレンチレストラン「ランベリー」でランチをとりました。この店は青山にある店(ミシュラン1つ星)の姉妹店だそうで、昨年4月から老舗料亭「中村楼」の一画に新しくできたレストランだそうです。さすが京都祇園の店だけあって、和の食材を洋にうまく活かし、見た目も味も素晴らしいものでした。特に変わっていたのが前菜としてでた「長野県天竜川の清流で育った鮎」(写真左)で、鮎の臓物を抜いてコニャックで洗い、それを焼いたもので、英語新聞(できればル・モンドかフィガロに包んで欲しかったですが)に包んで登場。そのままたで酢のソースにつけて齧る、というもので鮎の食べ方としてとても新鮮でした!メインは「淡路島産スズキのロティ」に大麦のリゾット、「若鶏の炭火焼きと水ナスのマリネ」(写真右)。特に鶏肉はあっさりした胸肉部分を炭火で焼き、クミンとコリアンダーの入ったソースにつけて食べる、というのが実に絶妙な味でした(すごく弾力のある肉でした)。デザートの白桃のコンポートはピンクの可愛い盛り付け。どの料理もバターや生クリームなどを使った、かなりこってりした伝統的なフランス料理ではなく、和のテイストのお腹にやさしい料理でした。京都は相変わらず観光客で賑わっていました。

 

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