本書は大阪大学文学研究科柏木隆雄教授が2008年3月末に定年退職されたのを記念に刊行された論文集で、バルザック研究者および大阪大学の教員、大学院生(卒業生)など41名が寄稿し、フランス文学、フランス語学の最前線の研究成果を披露している。
【担当部分】
●村田京子:「隠喩としての図像―『人間喜劇』におけるポルトレ―」(pp.151-164)
バルザックの作品大系『人間喜劇』に登場する女性のポルトレ(人物描写)において、絵画がどのようなメタファーとして使われているのかを、ジェンダーの視点から検証している。特に、ラファエロやジロデ、ムリーリョ、デューラーなどの聖母像に喩えられた女性の登場人物がそれぞれ、どのような性質を付与されているのか、当時の社会背景を考慮に入れながら分析した。さらにラファエロ、ジロデの聖母に喩えられる女性を「窓辺の娘」の構図と関連づけて考察している。