村田京子のホームページ – シャンソン研究会(2015.6.6)

大阪で開催された第25回シャンソン研究会に出席しました。今回の研究発表は盛りだくさんで、高岡優希氏の「ジャン=ジャック・ゴールドマン―マイノリティーへの眼差し」、大岩昌子氏の「シャンソンに惹かれるのはなぜか―その動機付けに関する世代別考察」、青柳りさ氏の「ボードレールを歌う―朗読、クラシックからシャンソン、ボサノバまで」、加藤修滋氏の「日本のタンゴの母がシャンソンの母となった日」の4つの発表が、午後2時から6時まで80名ほどの大勢の聴衆の前で行われました。どの発表も興味深いものでしたが、とりわけ高岡氏のゴールドマン(写真)の社会派の一面をクローズ・アップした発表が印象に残りました。彼の父親がナチス時代に、ポーランドからフランスに亡命したユダヤ系移民であったこともあり(といってもゴールドマン自身はユダヤ教の宗教教育とは無縁で育ったそうですが)、ショアーの記憶を歌ったComme toi (『お前のように』)、セリーヌ・ディオンが歌って800万枚を越える売上げを記録したLa Mémoire d’Abraham(『アブラハムの記憶』)、またドイツ人の母を持ち、ドイツとの国境近くのロレーヌ地方で育った歌手パトリシア・カースに提供した曲 Une fille de l’est(『東から来た娘』)、さらには喜劇役者Colucheがホームレスなど極貧にあえぐ人たちにクリスマスシーズンに暖かい食事を提供するために組織した団体への寄付のためにゴールドマンたちが企画したチャリティーショーの曲Chansons Les restos du cœur(『心のレストラン』)などの紹介がありました。フランスでは伝統的に、作家や歌手など芸術家が社会参加をし、時には体制批判や貧しい人々への連帯の眼差し、人種を越えた融合、平和を願う気持ちを表わした作品が多く見られますが、ゴールドマンのような流行歌手がここまで社会派であったとは、知りませんでした。やはり、シャンソンは言葉(paroles)が重きをなす歌だということを改めて認識した次第です。それは、青柳氏の発表でも同様で、19世紀の詩人ボードレールの詩(『悪の華』)がいまだに様々な歌手が独自に歌い続けていることに感銘を受けました。

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