村田京子のホームページ – チューリヒ美術館展

神戸市立博物館に「チューリヒ美術館展」を見に行ってきました。「印象派からシュルレアリスムまで」と銘打っているように、ホドラーの風景画、印象派のモネ、ドガ、ポスト印象派のゴッホ、ゴーギャン、セザンヌ、象徴派のセガンティーニ、ナビ派のボナール、ヴァロットン、表現主義のキルヒナー、ココシュカにムンク、フォーヴィスムおよびキュビスム(マティス、ブラマンク、ピカソ)、シャガール、抽象絵画としてはカンディンスキー、クレー、彫刻もロダンとジャコメッティの作品が展示され、様々な絵画が一堂に会する展覧会となっています。目玉は何と言っても、幅6メートルもあるモネの《睡蓮の庭、夕暮れ》(上図)で、睡蓮の連作でも画家の晩年のもので「夕暮れの水面のそよぎや光の反射」が描かれ、睡蓮がかろうじて見分けられるだけであとは光と色の洪水、抽象画的な雰囲気を持った作品と言えます。ジヴェルニーの庭園には20年前に行ったことがありますが、睡蓮の庭に柳の木、というのは絵の通りでした。ただ、驚いたのは日本の太鼓橋を模した橋が朱色ではなく緑色であったこと! 日本では考えられませんが、モネにとっては「緑」の橋の方が違和感がなかったのかもわかりません。私の一番のお気に入りはシャガールの《婚礼の光》(右図)です。シャガール特有の「透明な青」は、フェルメールの「ラピス・ラズリ」の青に近いそうです。最愛の妻ベラを亡くして失意のあまり1年ほど筆が取れず、そこから立ち直った後の作品だそうで、左の白い動物(翼をもっているのでペガサス?)がタキシードを着てワイングラスを片手に持っているのが何とも印象的。彼の作品には愛し合う男女が宙に浮いていたり、と一見メルヘンチックな絵が多いですが、戦争中ユダヤ人として国を追われるなど苦難の人生を辿ったようです。最後に印象に残ったのは、セガンティーニの《虚栄(ヴァニタス)》(下図)で、印象派に似た点描法を用いながら、泉に自らの裸身を映して自らの「美」を自覚する若い娘はまさに「虚栄心の目覚め」を表わしているようでもあり、水面に姿を現わす蛇が「旧約聖書」のエヴァを暗示しているようでもあり、その意味では象徴主義的な不思議な絵と言えます。ホドラーの《真実》(女性の周辺の男性像がモダンダンスのような動きを見せる)やジャコメッティの「歩く男」など、非常にダイナミックな動きを感じさせるものもあり、なかなか面白い展覧会でした。

展覧会の後、西宮の懐石料理のお店「立峰」で夕食を食べてきました。ここは手頃な値段で季節のものをおいしく頂けるお店で、何度か通っています。まず、見た目も美しい前菜(写真右)―特に空豆を卵とチーズで揚げたのが凝っていました!「土筆」は牛蒡で、いかなごはしっかりした味付けでした―、次にあいなめに菜の花のお椀、かぶらと穴子などの蒸し物、まなかつおの焼き物、刺身(写真左下)はまぐろのトロに鯛、イカでどれも口の中でとろけるほど美味でした。季節の野菜の天ぷら、鯛の塩煮、田楽は3種で、特に木の芽あえが上に塗られたものが絶品でした。眼を楽しませた後、お腹も一杯で大いに満足して帰路に着きました。

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