村田京子のホームページ – 『ロマン主義文学と絵画―19世紀フランス「文学的画家」たちの挑戦』、新評論、2015年

総頁数  217 頁

目次

【概略】

フランス文学と芸術の関わりは深く、画家、音楽家、彫刻家を主人公とする芸術家小説をはじめとして、音楽や美術に関連する作品が多く見出せる。本書は、絵画がフランス・ロマン主義文学の中でどのように扱われているのかを探るものである。例えば「近代小説の祖」と呼ばれるバルザックは、女性を描写する際に、ラファエロの聖母像など絵画を引きあいに出すことがしばしばであった。しかし、人物描写において絵画を参照するようになるのは、実はバルザックの生きた時代、すなわち19世紀前半からに過ぎない。その理由として、①フランス革命後のルーヴル美術館の一般開放、②複製画やリトグラフ(石版画)の普及、③経済的に余裕のできたプチ・ブルジョワが文化的教養を求めたことの3点を挙げることができる。小説の読者である大衆にとって、絵画はより一層身近な存在となったわけだ。その結果、読者に登場人物のイメージを喚起させるために、絵画を比喩として使うことが可能になった。例えば小説の中で、「彼女はモナリザのような神秘的な微笑を口に浮かべていた」と表現するには、一般的な読者がレオナルド・ダ・ヴィンチの絵を知っていることが前提となる。

文学作品で絵画が言及される場合、それがどのようなメタファーとして使われているのか、見定める必要がある。そこには芸術的要素だけではなく社会的要素、とりわけ人物像には「男らしさ」「女らしさ」に関する当時の社会的通念が無意識のうちに投影されている。それゆえ、こうしたジェンダーの観点から、バルザックやテオフィル・ゴーチエ、マルスリーヌ・デボルド=ヴァルモール、ジョルジュ・サンドらロマン主義作家の作品を取り上げ、絵画受容の相違点―とりわけ男性作家と女性作家の視点の違い―を浮き彫りにする。以上のように、本書では文学作品と絵画との相関性を探ることで、文学作品の新たな読解を試みていきたい。

【本書に関する書評・紹介記事】

『ふみのさと便り』21号(2015年3月21日:中村啓佑氏)

『ふらんす』(白水社)(2015年8月号:小倉孝誠氏)

日本フランス語フランス文学会cahier17(2016年3月:坂本千代氏、pp.33-34)

 

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