村田京子のホームページ – 女性学講演会(文学とジェンダー)
女性学講演会(大阪府立大学女性学研究センター、人間社会学部「文学とジェンダー」共同研究プロジェクト共催)
「文学とジェンダー」
開催日: 2014年12月13日(土)14時~17時
場所 大阪府立大学 I-site なんば2階
コーディネーター 村田京子
《案内》第18期女性学講演会「女性学・ジェンダー研究の現在」第1部第2回「文学とジェンダー」を開催いたします。今年度は、フランス・フェミニズムの先駆者として名高いスタール夫人の著作『コリンヌ』を取り上げます。『コリンヌ』は、優れた女性の悲劇を扱った物語として有名ですが、主人公二人がイタリア各地(ローマ、ナポリ、ヴェネツィア、フィレンツェ)を巡る旅物語でもあります。本講演では、舞台となるイタリアに焦点を当てながら、スタール夫人の女性像を探っていきたいと思います。関心のある方はふるってご参加下さい。(詳細は講演会ポスターをご参照ください)

14時~15時       :「終わりの予感―『コリンヌ』のヴェネツィア」   坂本千代 神戸大学教授

15時15分~16時15分:「絵画・彫像で読み解く『コリンヌ』の物語」    村田京子

16時30分~17時   : 講演者との質疑応答

《報告》今冬一番の寒さの中、大阪からだけではなく、東京や名古屋からも講演会のために駆けつけて下さった方もいて、本当にありがたい限りです。まず、坂本先生(写真左)がスタール夫人の『コリンヌ』執筆時期の歴史的背景(イタリア、特にヴェネツィア情勢)およびスタール夫人の伝記的要素(特に、バンジャマン・コンスタンとの関係、およびナポレオンとの確執)を説明した後、『コリンヌ』のあらすじを簡単に紹介し、その上で1795年のヴェネツィアがなぜ二人の恋人の別れの舞台として選ばれたのか、その理由を解き明かされました。『コリンヌ』では、保守的でメランコリーに陥りやすい「北」(イギリス)の男=オズワルドと陽気で活力溢れる「南」(イタリア)の女=コリンヌという「北」と「南」の対立が浮き彫りになっていますが、ヴェネツィアはさらに、オリエントの人々(トルコ人、ギリシア人など)が集う「東」の雰囲気と「西」の雰囲気を合わせ持ち、「東西南北の異なる要素が出会う特権的な場」であると同時に、「海と陸の出会うところ」で、「空の娘」=コリンヌが「海の水と風」によって打ちのめされる悲劇の舞台として格好の場所であったことを指摘されました。また、共和政について、さらに民衆や女性の置かれている状況を考察するのに適していたこともその理由として挙げられました。ちなみに坂本先生は、ジェラールの絵で有名な《ミゼーノ岬のコリンヌ》のイメージを思い浮かべながら、ナポリのミゼーノ岬を訪れたそうですが、今は雑草が生える丘(視界もほとんど開けない)に過ぎなかった、ということでした(地元の人は残念ながら、スタール夫人の作品は読んでいないようです)。

次に、村田が『コリンヌ』で言及される様々な絵画・彫像(コリンヌとオズワルドが訪れるローマのヴァティカン美術館、ヴェネツィアのウフィツィ美術館、コリンヌのローマの屋敷やティヴォリの別荘にある美術品など)が物語の展開にどのように関わっているのかを検証しました。まず、オズワルドを巡る二人の女性の対照的なポルトレ(人物描写)に注目し、コリンヌがドメニキーノのシビュラ(写真右)に喩えられ、異教の世界を代表しているのに対して、ルシールはコレッジョの聖母像に喩えられ、キリスト教の世界に属すること、さらに一方が「天分を持った詩人」であるのに対し、他方は家父長的な社会における「理想の女性」(「慎み深さ」「純潔」)を表象していることを明らかにしました(オズワルドはカノーヴァの「力の象徴であるライオンに寄りかかる悲しみの精」に喩えられています)。また、「天の復讐」によって苦悩の表情を浮かべるラオコオン像、とりわけニオベ像とコリンヌとの相関性、コリンヌが所有する絵画・彫像が彼女の運命を予告するものであること、特にキリストの受難をテーマにしたムリーリョの《十字架を背負うキリスト》とアルバーニの《十字架の上で眠るイエス・キリスト》は、コリンヌの「受難」と「復活」に重なることを見ていきました。参加者の皆さんは熱心に話を聞いて下さり、講演の後の質疑応答も活発に行われ、盛会のうちに終わりました(参加者30名)。

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