村田京子のホームページ – 『西洋近代の都市と芸術2 パリⅠ 19世紀の首都』(喜多崎 親編)、竹林舎、2014年

本書は編集者の言葉を借りれば、「西洋美術史研究を中心として、ある時代の都市のアート・シーンについて考察しようとする学術論文集のシリーズ」で、「芸術生産の場としての都市」という観点から、19世紀のパリを取り上げたものである。また、本書は「都市という限定された空間を、芸術生産の原動力となる環境として積極的に捉え直し、従来の都市と美術のあり方を内側から書きかえること」を目指し、3つの視点―「越境性と社会的文脈」、「芸術家を含めた人やもの、情報の『混交』」、「アイデンティティ」―を意識し、美術史だけではなく、音楽、建築、文学、哲学など他の学問領域の専門家の論考も含んでいる。学問領域横断という本書の目的に基づき、美術史の専門家ではない村田も寄稿している次第である。様々な領域の専門家による学術論文集に今回初めて参加したが、それぞれが刺激的で示唆に富む論考で、今後の研究に大いに参考にさせて頂くつもりである。19世紀フランスは、テオフィル・ゴーティエやボードレール、ユイスマンス、ゴンクール兄弟のように、美術評を書く小説家・詩人や、フロマンタンにように絵を描く小説家を輩出している。演劇、バレエも盛んで、まさに様々な芸術・文化の混交が特徴で、パリはその中心であった。その点でも多角的な視野のもとにまとめられた本書はユニークなものであると言えよう。

【出版社サイト・目次】

【担当部分】

・村田京子:「ロマン主義的クルティザンヌからゾラのナナへ―19世紀フランス文学における娼婦像の変遷―」(pp.129-148)

自然主義作家エミール・ゾラの『ナナ』は、19世紀後半の第二帝政期フランスにおける娼婦像を描いた小説である。ゾラはこの小説において、ロマン主義時代に席巻した「恋するクルティザンヌ」の脱神話化を目指し、「真の娼婦」を描こうとした。本稿では、ロマン主義的クルティザンヌと一線を画すゾラの娼婦像を見極めるために、ロマン主義文学からゾラの『ナナ』に至る娼婦像の変遷を、それぞれの女性像に関わる絵画的表象と結びつけながら考察した。取り上げる作品はアベ・プレヴォーの『マノン・レスコー』、デュマ=フィスの『椿姫』、バルザックの『従妹ベット』などで、そこに描かれる娼婦像とゾラのナナとの根本的な違いを社会的背景を考慮に入れながら、明らかにしている。ゾラのナナについては、印象派のマネやルノワールなどの絵画との関連を探っている。

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