村田京子のホームページ – 文楽鑑賞

国立文楽劇場に文楽「菅原伝授手習鑑」第二部を見に行ってきました。藤原時平の讒言によって大宰府に流された菅原道真の話を脚色したもので、第二部は道真のために働いた三つ子の兄弟(松王丸、梅王丸、桜丸)の悲劇を中心に物語が展開されています。松王丸は時平の舎人、弟二人は道真の舎人と敵味方に別れて喧嘩沙汰となるのが三段目。その兄弟が、父親・四郎九郎の70歳の誕生祝いに集まるものの、親王と道真の養女、苅屋姫の逢瀬を取り持った責任を取って、桜丸が切腹する、というのが「桜丸切腹の段」で、息子の介錯をせざるを得ない父親の悲痛な思いが滲み出ていました。この段は、人間国宝の七世竹本住太夫が担当し、彼の引退公演となりました。満89歳という高齢にも関わらず、張りのある声で(最後はさすがに少し、かすれていましたが)、40分間、素晴らしい義太夫を聞けました。人形遣いの操り方も本当に見事で、手足の細やかな動きは、まるで生きているかのようでした。四段目の「天拝山の段」では、道真が火を吐く場面もあり、迫力満点でした。次の「寺入りの段」「寺子屋の段」では、道真の息子菅秀才を匿う源蔵夫婦が菅秀才の首を差し出すよう命じられて苦悩する場面、さらに身代わりとして我が子・小太郎の首を差し出した松王丸夫婦の嘆きは本当に悲痛なものでした。親子の情を捨てて、主君のためにここまで尽くさなければならなかったのか、という疑問がわくと同時に、時代の不条理さを痛感しました。4時から9時までという5時間にわたる上演でしたが、時間が経つのを忘れるほど、感動的な文楽公演で、満席の客で、ロビーもごった返していました。こうした「大阪の文化」はお金には代えがたい価値を持ち、公的にも助成していくべきだと思いました。

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