村田京子のホームページ – ヴィアール先生を囲んで

2013年度日本フランス語フランス文学会秋季大会が九州の別府大学で、10月26日、27日の二日にかけて開催されました。26日には、フランスのAix-Marseille大学のBruno Viard教授が « Rousseau, le romantisme … et George Sand » というタイトルで特別講演をされました。ヴィアール先生は、父子二代にわたってフランスの共和派社会主義の思想家・哲学者のピエール・ルルー(Pierre Leroux)を研究され、ロマン主義文学にも造詣が深い方です(昨年、白水社[文庫クセジュ]から、ご著書の翻訳『100語でわかるロマン主義』が出版されました)。今回の講演では、ロマン主義を7つの特徴(信仰心、自然感、現実逃避、自殺願望、情熱的な愛、革命志向、芸術至上主義)で要約し、ルソーとも関連づけながら「高揚 (exaltation)」というキーワードで分析されました。氏によれば、ロマン主義作家たちは、個人/社会、自由/平等、利己主義/利他主義の間で、どちらか一方に傾く二元論であるのに対し、個人主義と社会主義を調和させ、弁証法的な解決を目指したのが、ピエール・ルルーでありました。そして、ルルーの影響を受けたサンドも同じ立場に立ち、彼女の『歌姫コンシュエロ』と『ルードルシュタット伯爵夫人』はまさに、ルルーの『人類について』の小説版であると述べられました。確かにサンドは、1848年の2月革命の時に共和派として政治に積極的に参加するものの、急進的なフェミニズム運動を展開していた『女性の声』紙のメンバーとは一線を画す、という一見矛盾した態度を取っていますが、これで納得がいきました。ヴィアール先生の講演は、非常に明晰でわかりやすく、様々な視点から活発な質疑応答がなされました。

26日の学会の前日の25日に、ヴィアールご夫妻を囲んでの懇親会が開かれ、ヴィアール先生を日本に招聘された中央大学の永見先生と、サンド研究会の有志が参加しました(写真はその時のものです)。会場は別府駅から車で5分の「白菊」別館「浜菊」という料亭で、洗練された料理だけではなく、庭に面した日本式の座敷にも、建築家の奥さまが大変気に入っておられました。ヴィアール先生は9年前の2004年のサンド生誕二百周年を記念する国際シンポジウムの際に来日されて以来、2回目の日本訪問となりました。前回は参加者が多くてあまりお話ができませんでしたが、今回はサンドやバルザックについてじっくりお話ができ、楽しいひと時を過ごすことができました。

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