村田京子のホームページ – 2013年度女性作家を読む会
女性作家を読む会(日仏女性研究学会)
関西女性作家を読む会
開催日: 11月9日(土)14時~16時30分
場所 奈良女子大学総合研究棟(文学系S棟)3階S312演習室
コーディネーター 吉川佳英子
《案内》今年度の「関西女性作家を読む会」を開催いたします。関心のある方はふるってご参加下さい。

【研究発表】

  • 高岡尚子「ジョルジュ・サンドにおける<老い>について」

  • 村田京子「ジョルジュ・サンドの世界における理想の女性画家像―『彼女と彼』から『ピクトルデュの城』へ」


【報告】  津田奈菜絵 「中・長期滞在フランコフォン向け京町屋シェアハウスのご案内」

《報告》今回の発表は、6月にベルギーのジョルジュ・サンド国際シンポジウムで発表した原稿を少し発展させた発表となりました。まず、高岡奈良女子大学准教授が、サンドにおける「老い」について話されました。サンドは72歳まで生き、当時としては長命でした。そのため年を経るにつれて彼女の「老い」に関する考えも変化し、若い頃の作品(『レリヤ』1833年)では、女性の「老い」は「破壊や絶望の表象」として捉えられていたのが、自分より若い世代の死(3人の孫や恋人マンソーの死)に一時は打ちのめされながらもそこから立ち直って死を乗り越え、最後に『祖母の物語』(1873年)では輪廻転生的な物語を紡ぎ出し、祖母から孫娘への継承という途切れることのない生の営みへの希望を抱くようになるという、時系列的な心境の変化を高岡先生は丁寧に説明されました。「老い」の問題、特に女性においては「美」から「醜」への変質ということで、アンチ・エイジングといった言葉が流行していますが、こうした身体の変容も含めて自らの「老い」を受容して将来への希望を持てれば幸せだと思います。サンドは死ぬ時に、自らの人生に悔いはなかったのではないでしょうか。

次に村田は、サンドの作品における女性画家について取り上げました。サンドの作品には女性のオペラ歌手、女優は何人か登場し、大きな役割を果たしていますが、女性の職業画家は『彼女と彼』と『ピクトルデュの城』に出ているだけです。それは、当時のアカデミーのヒエラルキーでは、聖書や神話を題材とした歴史画が最高位に位置し、歴史画を描くためには男の裸体をモデルにしたデッサン研究が必要で、女性には禁じられていた、ということに起因します。女性画家に許されたのは歴史画より下のランクの肖像画、静物画、風俗画でありました。『彼女と彼』はまさに、歴史画家のローランと肖像画家のテレーズの物語で、男性画家=天分を持ったロマン主義的芸術家、女性画家=再生産(模倣)の芸術家、という違いが明確に出ています。それがサンド晩年の『ピクトルデュの城』では絵の天分を持った少女が初めて登場し、努力の末に「生の真の秘密」を勝ち取る、という物語になっています。しかも、彼女を導くのは画家の父親ではなく、亡くなった母親であったことがサンドの特徴と言えます。ロマン主義文学では、「芸術の奥義」は男から男に伝えられる(例えば、バルザックの『知られざる傑作』)のがしばしばであるのに対し、サンドの場合はその構図を変えているわけです。ただ、「妖精物語」の形式で天分を持った女性画家を描いているのは、まだサンドの時代にはそうした女性が登場するのは困難であったこと、サンドの孫娘の世代には実現できることを彼女が期待したためかもわかりません。

発表の後、コレットを研究されていた津田さんが京都の町家を改造して、フランス人研究者などが短期間滞在できるシェアハウスを今年4月からオープンしたことのご紹介がありました。なかなか素敵なお部屋で、近所の人との交流(お祭りや運動会行事など)もあって、楽しそうでした(「京町屋とわ」のホームページ)。

それぞれの発表の後、質疑応答が活発になされ、その後の懇親会でも夜遅くまで盛り上がりました(参加者11名)。

HOME | PROFILE | 研究活動 | 教育活動 | 講演会・シンポジウム | BLOG | 関連サイト   PAGE TOP

© 2012 村田京子のホームページ All Rights Reserved.
Entries (RSS)

Professor Murata's site