村田京子のホームページ – バルザック研究会
バルザック研究会
第123回関西バルザック研究会
開催日: 2025年8月30日(土)15時~17時
場所 近畿大学東大阪キャンパス EキャンパスA館402共同演習室
コーディネーター 松村博史 近畿大学教授
《案内》下記のように、関西バルザック研究会を開催(対面とオンラインのハイブリッド)いたします。今回は、バルザックと親しかったジョルジュ・サンドと当時の人気女優マリー・ドルヴァルとの交流(ドルヴァルを主役にしたサンドの戯曲や、ドルヴァルをモデルにしたサンドの小説などについて)について、お話をする予定です。興味のある方は是非、ご参加ください。

研究発表

村田京子「マリー・ドルヴァルとジョルジュ・サンド」

《報告》連日、猛暑が続く中、17名の方に参加して頂きました(+ズーム参加7名)。ドルヴァルの生涯、ドルヴァルとサンドとの関係、サンドの作品における女優像をみた後、ドルヴァルの恋人ヴィニーが彼女のために書いた戯曲『チャタートン』と、サンドがドルヴァルのために書いた戯曲『コジマ』を比較し、前者が大成功したのに対して、後者がなぜ失敗に終わったのか、とりわけサンドの作品がなぜ「不道徳」だと非難されたのか、について分析しました。コジマは社会的・政治的・経済的活動の場である公的空間から切り離されて、家庭に閉じ込められた妻の疎外感を口にし、「夫に守られる妻」の立場を越えて、自分の名誉は自分で守れると「個人としての自己」を主張したことが、妻の夫に対する「忘恩行為」さらには「不道徳」だと批判されたわけです。さらにサンドの『ルクレチア・フロリアニ』では、女主人公の中にサンドの理想の女優像が見られ、そこには多分にドルヴァルの姿が投影されていることを明らかにしました。

会場の皆さんからは、ドルヴァルがいかに「ロマン派劇の化身」であったか、よくわかったという感想や、19世紀前半の作家や俳優など芸術家たちの交流、その結びつきが浮き彫りになったという感想を頂きました。また、バルザックやゾラなど男性作家の小説に登場する女優はすべて、パトロンを持って贅沢な生活を送り、男の財産を蕩尽し、その身を滅ぼす娼婦的な存在として描かれているが、サンドの場合は、一貫して女優の仕事を貧しい女性が自立して生きていくための手段とみなしていることに、気づかされた、との感想をもらいました。バルザックも、ドルヴァルに彼の戯曲を演じてもらいたかったのですが、諸事情のせいでドルヴァルが彼の芝居を演じられなかったのは残念です。

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