村田京子のホームページ – 「絹谷幸ニ 平和へ」展

ポスター奈良日仏協会の美術クラブで、大阪のスカイビルの天空美術館へ「絹谷幸ニ 平和へ」展(ポスター)に行ってきました。久しぶりのスカイビルで、大阪駅周辺が再開発で新しくビルが建っていて、すっかり迷ってしまいました。今回の美術クラブは、絹谷幸ニ天空美術館の顧問である南城守さんがナビゲーターで、いろいろ教えて頂きました。絹谷さんはイタリアのヴェネチアの美術アカデミーでアフレスコ画を学び、その手法で斬新な絵画を世に出した芸術家です。アフレスコ画とは、「イタリア語のfrescoを語源とし、日本ではフレスコ画と一般に言われている。絹谷が用いるのは、漆喰を壁面に塗り、その漆喰が完全に乾くまでの約24時間のうちに、水で溶いた顔料で壁に直接絵を描くブオン・フレスコ(湿式)技法である」(解説参照)とのこと。この技法では、鮮やかな色が年月を経ても色あせないそうです。現在、バチカンのシスティナ礼拝堂で新ローマ教皇を決めるためのコンクラーベが行われていますが、、システィナ礼拝堂のミケランジェロの天井画(《最後の審判》)も、南城さんによれば、この技法によるものだそうです。「漆喰が乾くまでの24時間」というのが、作業としては大変なところでしょう。

絹谷さんのアフレコ画で一番気に入ったのが、「日月天馬飛翔」(右図)で、天馬空の「青」の美しさでした。この澄んだ「青」は、以前、イタリアのパドヴァのスクロヴェーニ礼拝堂で見たジョットのフレスコ画の「青」を思い起こさせるものでした。この礼拝堂(左図)には、壁一面に「キリストの生涯」と「聖母マリアの生涯」が順をおって描かれています。ヨアキムの夢その中の一つ《ヨアキムの夢》(左図)の背景の「青」がまさに、ジョットに典型的な青で、天使の下半身(?)が少しぼやけているのは、天使が空から降りてきている状態のように思え、絹谷さんの絵の天馬が空に飛翔していくのと対照的な感じがしました。また、絹谷さんの《平治物語絵巻》(右図)は、源氏と平氏が朝廷の皇位継承を争った平治の乱を扱っていて、「人平治物語絵巻間の愚かしい業を直視し、仏の教えによって人類救済を希求する作者渾身の大作」(解説参照)ですが、燃え盛る紅蓮の炎の「赤」は、やはりジョットの壁画の《最後の審判》――十字架を中心にして、左が天国に向かう人々、右が地獄(左図)で、地獄では角を生やした大きな怪物最後の審判2や竜に体を食いちぎられる人間が描かれています。この地獄の「赤」と、絹谷さんの絵の炎の「赤」が重なるように思えました。絹谷さんは、西洋の技法を取り入れながら、日本独自の文化に移し入れた画家と言えるでしょう。

こうした絵の他に、ポスターにあるような鮮やかな色のキッチュな感じのオブジェもあり、それは日本というより、東南アジア的な、インド的なものです。絹谷さんは、イタリア、日本、東南アジア、インドを彷彿とさせる多文化的な芸術空間を作り上げていると言えるでしょう。こじんまりした美術館ですが、3D映像で竜が飛び出してきたり、絹谷ワールドを堪能することができました。

 

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