村田京子のホームページ – 『デ・キリコ展』

IMG_0001上京したついでに、上野の東京都美術館に『デ・キリコ展』(ポスター)IMG_0002を見に行ってきました。初夏というよりも、もう真夏という暑さの中、上野公演の奥の美術館まで歩いて行きました。デ・キリコは、ニーチェ哲学やベックリンの作品の影響を受けて「形而上絵画」と名付ける絵画を描いた画家で、フランスのアポリネールやシュルレアリストに衝撃を与えたと言われています。まずは、彼の肖像画、自画像のコーナーの後、彼が啓示を受けて描いたのが《イタリア広場》(右図)で、フィレンツェである日、見慣れた街の広場ば突然、初めて見る景色であるような感覚に襲われたそうです。それがこの絵で、「柱廊のある建物、長くのびた影、不自然な遠近法」によって、「不安や空虚さ、憂愁、謎めいた感覚」を生じさせます。旗がたなびく城壁にも、前景の道ににも人っ子一人おらず、騎士像が建物の後ろに隠れている(馬しか見えない)のも不思議な感じです。次にIMG_0004、キリコを特徴づけるものとして、「マヌIMG_0003カン」のモチーフがあります。彼は神話を題材とした作品を多く描いていますが、《ヘクトルとアンドロマケ》(左図)もその一つです。卵型の顔に全く目鼻立ちが描かれておらず、仮面をかぶっているかのようで、マヌカンは「謎めいたミューズ、予言者、占い師、哲学者」など様々な役割を演じています。この絵はトロイア戦争の物語の一場面で、戦地に赴くトロイアの勇将ヘクトルと愛妻アンドロマケの別れの場面とか。幾何学的な図が衣装にも組み込まれていて硬質なイメージですが、よりそう二人の姿には卵型の顔の曲線のためか、愛情も感じられます。また、同様のモチーフに《南の歌》(右図)があります。こちらの方が、全体的に柔らかな輪郭で、印象派のルノワールの影響を受けているとか。オレンジの色合いがルノワール的でしょうか。キリコは一旦、伝統的な絵画に回帰し、ネオ・バロック的な絵を描いた後、晩年に形而上絵画に戻り、過去の作品を再解釈した「新形而上絵画」を生み出したそうです。彼の絵画の変貌を見ましたが、やはり無機質なマヌカンが一番印象に残りました。

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