マルセイユ近郊の「カランク国立公園」に、1985年にアンリ・コスケールという潜水士が発見した洞窟(彼の名前にちなんでコスケール洞窟と呼ばれている)があります。そこには先史時代(3万3千年~2万9千年前)に描かれた動物(馬、野牛、ヤギ、巨大なシカ科のメガロケロス、ペンギンなど11種)や人間の手形、楕円の抽象的な図柄などの壁画がありました。この洞窟の入り口は深さ37m、そこから細いトンネルを137m進んだところにある(左写真参照)ため、近づくのが非常に困難なようです(すでに死者も出ている)。さらに今後、水没してしまう恐れがあるそうで、レプリカによって正確に再現されたものが博物館に収められています(右のパンフレット参照)。博物館はマルセイユの海に面した場所にあり、いかにも海の博物館らしい建物となっています。中に入るとまず、遊園地のように6人乗りのカートに乗り、ゆっくり進みながら洞窟を見て回る形になっています(要予約)。ヘッドフォンをつけ、解説を聞きながら回っていきますが、解説の場所になるとその場所(動物の絵や手形のある場所)が光って見えるという優れものです(左写真)。マルセイユに何と、ペンギンがいたようで、メスを巡って2頭のオス・ペンギンが争っている絵が描かれていました。この洞窟は住居ではなくスピリチュアルな場所として使われ、神話的な要素も含まれているとのこと。洞窟内を探検した後は、描かれた動物の等身大のレプリカ(右写真)が展示されていて、先史時代にタイムスリップしたような気になります。ラスコー洞窟もそっくりのレプリカが完成し、多くの人が訪れているようです。高松塚古墳もそうですが、貴重な壁画の保存につとめながら、多くの人に見てもらうにはレプリカの展示しかないような気がします(3Dプリンターの高度な技術もあることですし)。訪れた日は晴天に恵まれ、マルセイユの空は本当に真っ青(写真)でした!