村田京子のホームページ – 女性学コロキウム
女性学コロキウム(大阪府立大学女性学研究センター主催)
第2回「美術、文学とジェンダー」(人間社会学部「文学とジェンダー」共同研究プロジェクト共催)
開催日: 2012年12月22日(土)13時30分~17時
場所 大阪府立大学なかもずキャンパスB3棟106会議室
コーディネーター 村田京子
《案内》2012年度第2回女性学コロキウム・ポスター

村田がコーディネートを務める第2回女性学コロキウムは、九州大学芸術工学研究院准教授の米村典子先生をお迎えし、「美術、文学とジェンダー」というタイトルのもと、コロキウムを開催いたします。米村先生は19世紀フランスで活躍したロシア人の女性画家マリー・バシュキルツェフやゴッホ、スーラ、ドガなどを専門に研究してこられ、17世紀のイタリアの女性画家アルテミジア・ジェンティレスキについても19世紀以降の受容という側面からの研究をされています。今回はバシュキルツェフ、ジェンティレスキを取り上げ、「美術史が女性画家をいかに語ってきたか」についてお話をされます。次に、村田は19世紀後半のフランス人動物画家ローザ・ボヌールの生涯と作品を取り上げ、とりわけ彼女の思想の原点(サン=シモン主義など)と男装、女性との共同生活の意味を、その絵画作品と関連させながら探っていきます。同じく男装で有名であった同時代のジョルジュ・サンド(特に田園小説『魔の沼』)との関係にも触れるつもりです。美術と文学に興味のある方ならどなたでも歓迎ですので、ふるってご参加下さい。(参加申し込みの詳細はポスターをご覧ください)

講演中の米村典子先生



《報告》今回の女性学コロキウムではまず、米村先生が「伝記・神話・美術史 女性芸術家はいかに語られてきたか」というタイトルで、肺結核のため26歳の若さで亡くなったマリー・バシュキルツェフの略歴を紹介されました。バシュキルツェフはボーヴォワールの『第二の性』で、「有名になりたかったので絵を描く 決心をした」に過ぎない、と批判され、必ずしも優れた才能を発揮したわけではないようです。むしろ、彼女が残した日記が有名で、日記には、付き添いなしで 町を観察する自由が欲しいという彼女の願いが語られ、それは19世紀当時のブルジョワ女性に課せられた束縛の大きさを物語っています。それに対して17世 紀の女性画家アルテミジア・ジェンティレスキは、カラバッジョにも匹敵するほどの「偉大な芸術家」と批評家から高く評価され、フェミニズム美術史のイコン となっています。しかし、19世紀までの美術批評では、ジェンティレスキは「才能はあるが品行の悪い女性」、「絵画における才能だけではなく、優雅さと恋 愛沙汰」で有名といった、私生活に言及するものが多かったようです。しかも《ホロフェルネスの首を切るユディット》など歴史画で有名なはずが、アカデミー 絵画のヒエラルキーで下位の肖像画家とみなされていること、またはユディットの絵が私生活と結び付けて解釈されるなど、美術史において女性であるがゆえの 偏見が常につきまとっていることがわかりました。

講演中の村田



次に村田が「男装の動物画家ローザ・ボヌール その生涯と作品」というタイトルで発表し ました。ローザ・ボヌール(本名:ロザリー・ボヌール)は、父レーモンの影響でサン=シモン主義が主張する「女性の解放」を目指すと同時に、父の犠牲と なって36歳の若さで過労死した母の姿に家父長的な社会の犠牲者、「妻」の象徴を見出し、それが、彼女の独身主義の原点となります。《ニヴェルネー地方の 耕作》(1848)によって、優れた動物画家としての彼女の評価が確立します が、この作品に見いだせる、自然と人間の魂との神秘的な融合は、ジョルジュ・サンドの『魔の沼』(1846)の冒頭部分を彷彿とさせるもので、当時、二人 が対比されて論じられたのも不思議ではありません。興味深いのは、二人が「天才兄弟」と呼ばれ、「名誉男性」扱いされたことです。また、サンドと同様にボ ヌールは男装をしたことで有名で、当時、女性がズボンをはくため には警察から「異性装許可証」を認可してもらう必要があり、ボヌールは「異性装許可証」を6カ月ごとに死ぬまで更新し続けます。1853年の《馬市》は 「力と偉大さに溢れる光景」と批評家から絶賛され、彼女はイギリスやアメリカでも絶大な人気を博すようになります。そして1860年にはフォンテーヌブ ローのビー城を買い取り、そこでアンリエット、ナタリー・ミカ母娘と3人で共同生活をし、言わば女性のユートピアを作りあげていくわけです。

二つの発表の後、活発な質疑応答がなされ、盛会のうちに終わりました(参加者42名)。なお、米村先生、村田の発表原稿は『女性学研究』第20号(2013年3月刊行)に掲載されます。

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