村田京子のホームページ – 「文学とジェンダー」シンポジウム(人間社会学部共同研究プロジェクト主催) 
「文学とジェンダー」シンポジウム(人間社会学部共同研究プロジェクト主催) 
第1回「嫉妬する女」
開催日: 2012年11月2日
場所 大阪府立大学中百舌鳥キャンパス
コーディネーター 村田京子
《案内》 人間社会学部「文学とジェンダー」共同研究プロジェクトの2012年度第1回目ミニシンポジウムを下記の通り、開催いたします(詳細はポスターをご覧ください)。今回は、「嫉妬する女」というテーマで日本文学、中国文学の専門家が文学作品を探ります。参加は自由ですので興味のある方は是非、ご参加下さい。

1時30分~2時30分 : 青木賜鶴子 「嫉妬する女」(平安時代篇)

2時40分~3時40分 : 大平桂一「嫉妬する女」(古代中国篇)

文学とジェンダー「嫉妬する女」ポスター

《報告》  日本文学において「嫉妬する女」と言えば、『源氏物語』の六条御息所(嫉妬のあまり、生霊となって葵の上や紫の上を苦しめた)が有名ですが、青木先生は今回、もう一人の「嫉妬する女」として、『蜻蛉日記』を書いた藤原道綱母(藤原兼家の妻の一人)を取り上げられました。蜻蛉日記関係系図や年表を参照しながら、『蜻蛉日記』の一部を読んでいくことで、当時の「結婚」のあり方(通い婚で3晩泊ると「結婚」の契約となることなど)が非常によくわかりました。また、道綱母が自分より身分の低い「町の小路の女」に嫉妬し、同じく夫になおざりにされた正妻には仲間意識のせいか、贈答歌を送っていることが興味を引きました。さらに、兼家が訪れても怒って戸を開けなかったのは、「待つ女」の立場に置かれた彼女の精一杯の抵抗であったと思われます。

  質問に答える大平先生



次に大平先生から漢代劉向の『古列女伝』に登場する「嫉妬しない女」の紹介がありました。その中で興味深かったのは「天子の妻は12人、諸侯は9人、卿大夫は3人、士ならば2人」とされているので、夫にもう一人妻がいても構わない、という女宗(「女の鑑」)の言葉で、昔の中国でも日本と同じ状況であったのが窺われました。ただし、女宗のような女は男性から見て理想的な女性像に過ぎず、現実にはあり得ない、というお話でした。また、魯迅が集めてまとめた『妬記』には、逆に夫を鞭で叩くサディスティックな妻が登場すること、さらに『幽明録』では生霊となって恋する男のもとに通う女性の話があり、大平先生の解釈では、これが『源氏物語』の六条御息所の生霊の話につながるということでした。お二人の興味深いお話の後、活発な質疑応答がなされ、シンポジウムは盛会のうちに終わりました。(参加者39名)

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