村田京子のホームページにようこそ!
このホームページは村田京子の研究活動・教育活動を紹介すると同時に、同じ関心・興味を持つ人と情報を共有することを目的としています。なかなか時間がなくて毎日は情報を発信できませんが、時々ホームページをのぞいて見て下さい。
村田の専門分野は19世紀フランス文学で、大学の卒業論文でバルザックをテーマに選んで以来、修士論文、博士論文もバルザック一筋の研究をしてきました。「近代小説の祖」とみなされるバルザックの『人間喜劇』は約90篇にものぼり、王侯貴族からブルジョワ階級、商人や農民、犯罪者に至るまで様々な階級の老若男女が登場し、登場人物だけでも2000人を越えるほどです。扱われるテーマも政治・経済・芸術・思想・哲学・結婚(女性の問題)など様々で、研究のテーマに事欠きません。とりわけバルザックは「閨房の作家」と揶揄されたほど、女心を描くのに長け、自らの気持ちを代弁してくれたと感謝する女性たちからのファンレターが殺到しました。そこでバルザックの描く女性像に焦点をあて、ジェンダーの視点から分析するうちに、男性作家の描く女性像と、女性作家の描く女性像は同じなのか違うのか、違うとすればどういう点に違いが現れるのか、それを検証してみたいと思うようになりました。
最近の村田の関心は、19世紀フランスの男性優位の文壇にあって、少数派の女性作家たち―スタール夫人やジョルジュ・サンドのような仏文学史に残る作家だけではなく、歴史に埋もれた女性たち―で、彼女たちの生涯とその作品を歴史的・社会的背景を考慮に入れながら、ジェンダーの視点で検証していきたいと思っています。19世紀ヨーロッパ社会は、21世紀日本の私たちが生きる、資本主義社会のルーツであり、その原点に遡って女性の生き方を考えることで、新しい展望が開けることを願っています。
また、もう一つの関心は絵画と文学の相関関係についてです。文学作品には、女主人公を「ラファエロの聖母マリアのように純粋無垢」と絵画に喩えたり、「レオナルド・ダ・ヴィンチのモナリザのような微笑を浮かべた」などと、人物像を描写するにあたって、絵画を援用することがしばしばです。作家が絵画をどのように捉えているのか、時代や性別によって捉え方が違うのか、これもジェンダーの視点から探っていきたいと思っています。
さらに、絵画と文学との関連を見ていくうちに、モードと文学との相関関係にも興味を持つようになりました。バルザックを始めとする19世紀の作家たちは登場人物の服装について、詳細な描写を行っており、服装が身分・職業を表すばかりではなく、その人物の気質や生活習慣も反映しています。文学作品で服装やモードがどのように扱われているのか、社会的・文化的・ジェンダー的観点から探っていきたいと思っています。
最近では社会貢献、産学共同が盛んに謳われ、実利的な学問ではない文学研究が疎かにされる傾向があります。しかし、文学の役目は社会の変動期にあって、いち早く時代の精神(とりわけ社会の不安、危機感など)をすくい取り、言葉にすることだと思います。時代や社会の認識を深めるためにも文学作品をひも解く価値があるのではないでしょうか。