村田京子のホームページ – 『200年目のジョルジュ・サンド―解釈の最先端と受容史』(日本ジョルジュ・サンド学会編)、新評論、2012年

ジョルジュ・サンドについて現代の日本人は何を知っているだろうか。音楽家ショパンの恋人、男装の麗人、19世紀のフェミニスト・・・。波乱に満ちたその長い生涯が生み出した作品は膨大であり、日本語に翻訳されていないものも多い。だが、彼女の有名な田園小説『愛の妖精』や『魔の沼』は何度も訳されて版を重ねてきた。また、生誕200周年にあたる2004年以降、彼女の最大傑作とも言われる『歌姫コンシュエロ』や幻想宗教小説『スピリディオン』の翻訳が出版されて作家としてのサンドの知名度も上がってきている。しかも、日本におけるサンド研究は活発で、現在までに多くの伝記、研究書、論文などが発表されている。
2012年はわが国においてサンドの最初の翻訳単行本発行からちょうど100年という節目の年にあたる。そこで、日本ジョルジュ・サンド学会に所属する12名の執筆者たちは、過去の豊かな研究成果をふまえながら独自の花を咲かせている日本のサンド研究の一端をこの機会に示したいと願ったのであった。サンド作品の面白さ・奥深さを伝えたい、彼女の作品に描かれる近代フランスの光と影を詳しく検討することによって現代日本社会を再考するヒントにしたい、このような意気込みを持って3年がかりで完成させたのが本書である。
本書第1部では「男と女」、第2部では「芸術」、第3部では「自然」を中心テーマとしてサンド作品を様々な視点から掘り下げ、その多面的な作品世界を浮き彫りにしている。次に、ジョルジュ・サンドという人物やその作品の日本における受容史(研究史・翻訳史・伝記など)および翻訳リスト、年表などの資料が収められている。文学好きの一般読者だけではなく、仏文学研究者や、これからサンド研究を始めようとする人たちにとっても本書は貴重な一冊となることだろう。

【目次】

【担当部分】

●村田京子:「解釈の新しい視座 2.交差する芸術」第4章「絵画に喩えられた女性たち」 (pp.146-160)
サンドの作品には様々な絵画や画家の名前が見いだせるが、特に登場人物の身体的特徴や精神面を述べるポルトレ(人物描写)において、特定の絵画がしばしば援用されている。本章では、そうした「絵画に喩えられた女性」のポルトレ、とりわけラファエロやホルバインの聖母像を援用した人物描写を中心に、絵画に対するサンド独自の視点とそこから読み取れる女性像を検証する(取り上げる作品は『ローズとブランシュ』『アルバーノの娘』『イジドラ』『ジャンヌ』など)。ラファエロ、ホルバインの聖母像の他にもコレッジョの聖母像、カノーヴァの《マグダラのマリア》などにも言及している。
●坂本千代、西尾治子、村田京子:「受容の歴史 ジョルジュ・サンドと日本」第3章「研究史」 (pp.234-243)
日本におけるサンド研究の動向を第二次世界大戦後から現在に至るまで概観した。

【本書に関する書評】

PR誌10月号
日仏女性研究学会『女性情報ファイル』2012年9月号(吉川佳英子氏)
日本フランス語フランス文学会書評:cahier No.12, 2013年9月, pp.16-18(岩本和子氏)

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