村田京子のホームページ – 水声社版『人間喜劇』全集について

IMG_0001水声社版『人間喜劇』全集20巻が、昨年11月から毎月刊行されています(この全集に関しては「講演会・シンポジウム」欄の、2025年度仏文学会秋季大会ワークショップ(2025年10月26日開催)の内容を参照のこと)。

この『人間喜劇』全集に関して、本全集の責任編集の一人である私市保彦氏と小倉孝誠氏の対談が行われ、『週刊読書人』(2026年2月27日付け)に対談記事が掲載されました。二人の対談でとりわけ印象に残ったのは、小倉氏の指摘(バルザックはフロベールやゾラ、プルーストなど19世紀、20世紀の作家に大きな影響を与えただけではなく、現在の作家ウェルベックもバルザックに言及している)で、200年以上前の作家バルザックの作品はまだ色あせていないことを改めて実感しました。

また、『図書新聞』(2026年3月7日付け)でも、本全集のもう一人の責任編集者、柏木隆雄氏と石井洋二郎氏の対談記事が掲載されました。この対談で印象に残ったのは、石井氏がバルザックを「言葉の建築家」と呼んでおられること、そして『人間喜劇』が「風俗研究」「哲学的研究」「分析的研究」に分類され、「風俗研究」ではさらに「私生活情景」「地方生活情景」「パリ生活情景」「政治生活情景」「軍隊生活情景」「田園生活情景」と6つの情景に区分されたうえで、各作品が「正」と「反」の関係を織りなして連鎖しているという、柏木氏の言葉でした。また、批評家のブルデューがバルザックを取り上げず、なぜフロベールの作品を分析の対象にしたのか、というお二人の対談を通して、バルザックは「過剰」の作家で、食事の場面などでは食べ物の味や匂いが沸き立ってくるのに対して、フロベールの方はできるだけ無駄を削ぎ落して作品を制作したという、二人の作家の根本的な違いに納得がいきました。石井氏が指摘されているように、『人間喜劇』全体の主題は「恋(passion)とカネ、権力」であり、それは21世紀の現代社会にもあてはまると思います。

HOME | PROFILE | 研究活動 | 教育活動 | 講演会・シンポジウム | BLOG | 関連サイト   PAGE TOP

© 2012 村田京子のホームページ All Rights Reserved.
Entries (RSS)

Professor Murata's site